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ショートエッセイ:中通りコミュニティ・チャーチ

つかんでいるもの

(2011年7月10日)

牧手塚治虫さんの「ブラック・ジャック」という漫画に次のような話があります。

火山が噴火したとき、立入禁止になっているにも関わらず、鉱物マニアの一人が山に登ってしまいます。そして、岩の割れ目に珍しい鉱物を発見して、そこに手を突っ込み、抜けなくなってしまいました。

そこでブラック・ジャック医師が彼を救出に向かうのですが、どうしても腕を抜くことができません。付近には有毒ガスが発生し始め、早く脱出しないと死んでしまいます。そのため、やむを得ずその場で腕の切断手術を行ないました。ところが、切断された腕は、するりとその穴から抜けました。

実は、このマニアが穴の中で鉱物をしっかりと握っていたために、腕が抜けなかっただけなのでした。石ころを手放さなかったばかりに、彼は腕を失い、下手をすれば命さえ失うところだったのです。

猿を捕まえるとき、同様の方法を使うと聞いたことがあります。猿の手がやっと入るくらいの木の穴に、おいしい木の実をいっぱい詰めておきます。すると猿がそれを捕ろうとして木の実をつかむと抜けなくなり、猟師は悠々と猿に近づいて捕らえてしまいます。猿は危険が迫っているのに、木の実を離さないので逃げられないわけですね。

しかし、私たちはこの鉱物マニアや猿を笑えるでしょうか。一時的な価値しかないものにとらわれるあまり、永遠に価値あるものを失うようなことがないようにしたいものですね。

「人は、たとい全世界を手に入れても、まことのいのちを損じたら、何の得がありましょう」(マタイ16:26)。

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