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ショートエッセイ:中通りコミュニティ・チャーチ

Can I help you?

(2020年8月16日)

美学者の伊藤亜紗さんが出演なさったテレビ番組を観ました。伊藤さんの知り合いに、中途失明なさった方がいらっしゃって、その方が「失明してからは毎日が『はとバス』に乗っているみたいだった」とおっしゃったそうです。

はとバスに乗るとバスがあちこちの名所に連れて行ってくれて、ガイドさんが分かりやすい説明をしてくれる。はとバスに乗って楽しいのは非日常の観光だからで、それが毎日続くとしたらどうだろうか。障がいを抱えている人を助けたいと思うのは素晴らしいことだし、障がい者もその気持ちはありがたいと思う。しかし、障がい者だって大変だけれどもこの世界を自分の感覚で捉えたいと思っているのに、必要以上に連れて行ってもらったり説明されたりしてしまうと、自分では何もできない「障がい者」を演じざるを得なくなってしまう、と。

相手にはこれが必要な「はず」だ。相手も私がそうすることを望んでいる「はず」だ。私たちはしばしばそういう思い込みをしてしまいます。その結果相手の意に沿わないよけいなお世話を焼き、かえって相手をつらい思いにさせたり、無気力にさせたり、依存的にさせたりしてしまっているのかもしれません。

しかし、相手が何を望み、何を望んでいないのかを知ることは大変ですね。 あるとき、イエスさまは目が見えない人に尋ねました。「私に何をして欲しいのですか?」(マタイ20:32)と。全知全能の神が人となられたイエスさまでさえそうしていらっしゃるのですから、有限な力しか持たない私たち人間は、自分は分からないのだということを謙遜に認めて、相手に尋ねてみるというのはどうでしょうか。

英語では、誰かのお役に立ちたいと思ったとき「Can I help you?」と尋ねます。直訳すれば「私はあなたを助けることができますか?」です。押しつけがましくない、素敵な表現だと思います。日本語でも、「お手伝いが必要ですか?」「何かお手伝いさせていただけませんか?」と、押しつけがましくなく、しかも可能ならお役に立ちたいという積極的な思いを伝える尋ね方ができるといいですね。

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