幸せの白い布

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(2012.10.21)

フロリダに向かう長距離バスに、3人の若者が乗っていました。彼らはフロリダで休暇を楽しむつもりでした。他の乗客も、みんな同じようにうきうきとしていました。しかし、その中に一人だけ陰気な顔つきで座っているおじさんがいました。彼は、バスの後ろの席で、どんよりとうつむいています。3人の若者は、陽気に声をかけました。そして、彼らの明るさに、少しずつ心を開いたこのおじさんは、身の上話を始めます。

彼は、かつて人を殺めてしまい、そのために刑務所に収監されていました。彼は、刑務所の中から妻に手紙とサイン済みの離婚届けを送りました。「俺は今まで君に対してひどい夫だった。その上、こんな大変なことをしでかした俺を待つことはない。それに、子どもたちが、殺人者の子どもとして生きていくのはかわいそうだ。君もまだ若い。だから、もし望むなら、離婚して新しい人生を選び取ればいい」と。

彼はそこで模範囚として過ごし、刑期を終えて出獄しました。そして、ジャクソンビルにある自分の家に戻っていく途中だったのです。

彼は、出獄に先立って、もう一度妻に手紙を書きました。「もしも、自分を赦し、夫として、そして父親として迎え入れてくれるなら、バスの停車場の横にある大きな樫の木に、白い布を下げておいてくれ。もし、布がなかったら、俺はそのまま通り過ぎよう」。

ここまで話して、おじさんは若者たちにこう言いました。「しかしなぁ、手紙を送ったものの、俺は赦される自信がないのだよ。だいたい、今でも妻や子どもたちが、あの家に住んでいる可能性だってほとんどありはしないんだ」。だから、彼はどんよりとうつむいていたわけです。

ジャクソンビルが近づいてきました。3人の若者は、身を乗り出して樫の木が見えないかと探しました。一方、おじさんの方は、だんだんとうつむき加減になり、ついには目を閉じてしまいました。

わーっとバスの中に歓声が上がりました。「おじさん、おじさん! ほら! ほら! 見てごらんよ!」 若者たちがおじさんを引き起こしました。おじさんがおそるおそる目を上げてみると……。

停車場の樫の木の枝には、白いハンカチがしっかりと結びつけられていました。

それどころか、シーツ、ブラウス、シャツ、果てには子どもたちのパンツまで! 1枚だけだと風で飛ばされるかもしれない。お父さんが見落とすかもしれない。だから、およそ家にあるありとあらゆる白い布きれが、樫の木一杯に結びつけられていたのです! 「私たちは、あなたを待っていました。これがその証拠です!」 たくさんの白い布きれは、そんなふうにおじさんの心に語りかけてきました。

どこかで聞いたことのある話? そうです。アメリカのヒット曲「幸せの黄色いリボン」、そして邦画「幸せの黄色いハンカチ」は、この話をモデルに誕生したのだそうです。

神さまは、あなたを愛しておられます。あなたを赦しておられます。そして、あなたを喜んで神の家族に迎え入れてくださろうとしておられます。その証拠として、神さまは樫の木ならぬ十字架の木をお示しになられます。「これをごらん。私はこんなにもあなたのことを愛しているのだ」。


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