初心忘るべからず

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(2013.1.13)

ある武士が、殿さまの使いで江戸に上ることになりました。途中、殿様同士が親戚関係にある藩を訪ね、あいさつをすることになっていました。迎えた藩では、彼を接待して茶会を開いてくれました。

ところがこの武士、武芸には大変秀でていましたが、茶の湯の心得はまったくありませんでした。これは困った。そそうでもしたら主君の恥だ。そうなった場合には腹かっ切っておわび申し上げよう。そのような悲壮な決意で、彼は招待に応じました。

当然、彼の所作は、茶の湯の作法通りではありませんでした。しかし、歓迎に対して心からの感謝を表そうとする彼の真摯な態度に、迎えた藩の家老たちは「もののふとは、かくありたいものよ」と大いに感じ入りました。こうして、彼は自藩の面目を施したのでした。

さて、江戸に着いた彼は、さっそく茶道を熱心に学び始めました。そして、江戸での任務が終わって帰国の折り、再び先の藩に立ち寄りました。前回大変気持ちの良い態度を見せてもらった人々は、またもや茶会を開いてくれました。

江戸での熱心な学びで、すでに自信をつけていた彼は、緊張することもなく、そつなく、作法どおりに茶会をこなしました。しかし、家中の人々は、心が感じられない彼の態度に大変失望したのでした。

夫婦関係でも、仕事でも、慣れてくると、いつの間にか新鮮な感動とか感謝とかを忘れてしまうことがあります。結婚当日のあの感動。就職したての頃のあのやる気と緊張。いつまでも初心を忘れず、事に当たりたいものです。

そして、イエスさまとの関係も。

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