母の愛、神の愛

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(2014.3.2)

1973年の事です。八丈島に住むご婦人の元に、栃木県警から電話が入りました。「息子さんが交通事故に巻き込まれて、意識不明の重体となり、現在栃木県の病院に入院しています。免許証から、お宅の息子さんだと分かりました」。この方の息子は、22才で家を出て行ったきり、1年間全く音信不通になっていました。

お母さんが病院に着いてみると、息子は顔も体も包帯だらけのまま、ベッドに横たわっていました。お母さんは1週間病院に泊まり込んで看護しました。1週間たった日、名前を呼ぶと息子は「母ちゃん」と答えました。意識が回復したのです。それは、奇跡のような出来事でした。

お母さんは、それからも付きっきりで看護しました。体をさすってあげたり、八丈島の様子、近所の人たちの様子を話して聞かせてあげたり。息子は「ひどく頭を打ったから、分からないことだらけになったんだよ、母ちゃん」と、ほとんど話に乗ってくることはありませんでしたが、うれしそうにお母さんの話に耳を傾けていました。

容態が安定し、落ち着いてくると、お母さんは、息子の話し方や声が以前と全く違うこと、身長も伸びていることなどに気が付きました。一度だけ、それとなく尋ねてみましたが、息子は「変わるんだよ。成長するといろいろとね。母ちゃん」と、静かに答えるだけでした。お母さんは、それからもこまめに彼の世話を続けました。

やがて息子の顔の包帯が取られる日が来ました。それは、息子とは全く違う顔でした。それを見ても、お母さんは全く驚くことなく、彼の退院の日まで世話をし続け、退院を見届けると、一人で八丈島へと帰って行ったのでした。

息子さんの免許証は、この青年が盗んだものでした。青年は両親の愛を知らずに育ちました。彼にとって、この数週間の、見知らぬおばさんとの触れ合いは、今まで体験したことのないぬくもりと感動だったのです。しかも、あのおばさんは、自分が彼女の息子ではないということに気が付いた後も、全く同じ態度で、まるで本当の息子のように関わり続けました。彼は体がいやされたばかりでなく、心もいやされました。退院後、彼の生き方は180度変えられていったのです。

母の愛は、神さまの愛に最も近いと言われます。無条件の愛は人を変えます。そして、あなたも神さまから愛されています。

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