すでに祝福の中

トップページショートエッセイ集2016年 > このページ

(2016.8.21)

神学者トマス・アクイナス(1225年頃〜1274年)が、教皇イノセント2世のもとを訪ねました。教皇の執務室に通されたトマスに、イノセント2世は、たくさんの金貨を見せながら言いました。「どうだね、博士。もはや教会は、『金銀は私にはない』とは言わなくなった」。すると、トマスはこう答えました。「はい、猊下。そして、教会はもはや『イエス・キリストの名によって歩きなさい』と言うこともできなくなりました」。

トマス・アクイナスは、中世で最も偉大な神学者の一人であり、優れた著作をたくさん残し、カトリック教会と聖公会によって聖人と認められ、カトリック教会で33人いる教会博士の一人にも加えられています。議論においても決して逆上したりすることなく、常に冷静でありながら、論争相手でさえ引きつけてしまうような、非常に親しみやすい人柄の人物だったようです。

そんな彼のことを、友人が「あなたは我が会(彼はドミニコ会という修道会のメンバーでした)の誇りだ。いずれ、枢機卿になるだろう」とほめたとき、当の本人はこう言ったそうです。「私は教会の中でも、ドミニコ会の中でも、何か偉い者になりたいとは思わない。今のままでいるのが一番いいのだ」。

彼は、傲慢こそ、神さまの祝福を台無しにしてしまう、もっとも恐ろしい毒だということを知っていたのでしょう。

先日、ある方からこんな言葉を聞きました。「私はイエスさまと出会いたい。イエスさま抜きには、あの職場でも、家庭でも、やっていけない」。もしトマス・アクイナスがこの言葉を聞いたとしたら、きっとこの方のことを絶賛したに違いありません。こう言えた時点で、この方は、すでに神さまの祝福の中にいらっしゃるのです。

Copyright(c) 2016 Nakadoori Community Church All Rights Reserved.