苦難の始まりと希望

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出エジプト記1章1〜22節

(2016.8.7)

参考資料

モーセに率いられてイスラエルがエジプトを脱出した時期については、大きく2つの説があります。紀元前15世紀半ばとする早期説と、紀元前13世紀とする後期説です。
  • 早期説の根拠は、第1列王6:1からの計算(ソロモンの即位は前970頃で、その480年前)、前14世紀にハビルと呼ばれる人々がカナンの地を侵略しているという文書が残っていること(ヨシュアによるカナン侵攻?)、当時いた王の娘ハトシェプストだったら、イスラエル人の男の子を殺せという父の命令に背いてモーセを養子にしかねない、などです。
  • 後期説の根拠は、出エジプト1:11にラメセスという町が出てきますが、第18王朝のラメセス2世(在位前1290-1224年、または前1279-1212年)が「ペルラメセス」(ラメセスの家)という首都を建設したということなどです。
早期説と後期説のどちらが正しいかは、まだ決着がついていませんが、聖書の他の箇所と調和しやすいのは早期説です。早期説の場合、モーセと対決してひどい目に遭ったエジプト王は、アメンホテプ2世(在位:紀元前1453-1419年)ということになるでしょう。

詳しい年代については、こちらのページをご覧ください。

11節のピトムとラメセスは、ナイル川下流にあった町です(地図はこちら)。パロ(ファラオ)とは、エジプト王の称号です。

15節のヘブル人とは、イスラエル人(ユダヤ人)のことです。川を越えてきた人という意味があります。先祖アブラハムが、ユーフラテス川の向こうのウル出身だからでしょう。

聖書からのメッセージ

イントロ

祝福のうちに創世記が終わり、出エジプト記に入ります。すると、神の民イスラエルに危機がやってきます。世界最大の帝国の一つがイスラエルを抹殺しようとしたのです。

日本でも、かつて豊臣・徳川政権の頃に大規模な迫害がありましたし、太平洋戦争の頃にも教会や個々のクリスチャンたちが激しい迫害に遭いました。私たちも、いつか同じ目に遭わないとは言い切れません。

そこまで大規模な迫害や攻撃でなくても、会社とか家族とか友人関係とかで、「ちょっとした権威者」から、信仰を選ぶかそれとも自分の権威に従うかと迫られることは、よくあることでしょう。

今日は、権威者から攻撃を受けたイスラエルの体験を通して、私たちへの励ましと教訓をいただきましょう。

1.イスラエルの体験

ヨセフのことを知らない新しい王

エジプトは、ヨセフのおかげで飢饉を乗り越えることができたばかりか、周りの国々からも食料を買いに来る人々が押し寄せてきたおかげで大いに富み、また租税の制度が整って王の権力が増大しました。ですから、王も家臣たちも国民も、皆ヨセフや彼の家族イスラエル一家に対して、感謝と尊敬を表していました。

ところが、ヤコブが死にヨセフや兄弟たちが死んだ後、エジプトの王朝が変わります。エジプトではしばしば王朝が変わって、新しい王族がエジプトを支配しました。
  • たとえば、紀元前16世紀半ば、それまでナイル川下流地域を中心に支配していたヒクソス王朝を、上流地域出身のイアフメス1世が滅ぼして、新しい王朝(第18王朝)を開いています。
新しい王は、ヨセフの功績を知りませんから、どんどん数が増えていくイスラエルの人々が脅威の対象にしか見えませんでした。いつか自分たちに反逆するのではないかということです。

そこで、王はイスラエルの民を奴隷身分に落として、様々な建築現場に引き立てて、過酷な労働を課しました。

男子殺害計画1

それでも、イスラエルの民は、ますます増え広がってきました。多産の上、長寿だったからです。

そこで、王は次の手を打ちます。労働をさらに厳しくすると共に、イスラエル人の助産婦に対して、出産に立ち会ったとき、男の子だったら殺してしまえと命じました。

しかし、17節にこう書かれています。「しかし、助産婦たちは神を恐れ、エジプトの王が命じたとおりにはせず、男の子を生かしておいた」

当然、王は命令違反を怒りますが、助産婦たちは「ヘブル人の女はエジプト人の女と違って活力があるので、助産婦が行く前に産んでしまうのです」と言い訳して、男子殺害の命令を守ろうとしませんでした。

イスラエルの神ヤハウェは、助産婦たちを大いに祝福されました。

男子殺害計画2

助産婦たちが役に立たないと知った王は、全エジプト人にお触れを出します。それは、イスラエル人の男の子が生まれたら、ナイル川に投げ込めという命令です。まるで、ナチスドイツが支配していた頃のオランダやポーランドで、ユダヤ人が隠れ住んでいるのを見つけたら密告しろと命じたようなものです。

しかし、それでもイスラエル人は滅びませんでした。この命令が出されてから少なくとも80年後、80歳になったモーセが立ち上がってイスラエルの民と共にエジプトを脱出します。そのとき、兵役に就くことができる成人男性だけで603,550人いました(民数1:46)。兵役を免除されているレビ族の人たちや女性や子どもや老人を入れれば、おそらく300万人くらいの大集団でしょう。

王族は別の場所(おそらくナイル川の上流地域)にいた人たちですが、この命令を受けたエジプト人たちというのは、元々ナイル川下流地域に住んでいた人たちです。代々ヨセフの話を聞かされていて、イスラエルに対して否定的な気持ちを持っていないどころか、むしろ同情的だったかもしれません。そこで、ヨーロッパ各地でナチスの迫害からユダヤ人をかくまおうとする人たちが現れたように、あえてエジプト王の命令に背いて、ユダヤ人の赤ちゃん見つけても知らぬふりをしてくれた人たちがたくさんいたのかもしれません。

そもそも、イスラエルの人々が住んでいたゴシェンの地は、通常のエジプト人の居住地からは離れていました。わざわざゴシェンの地まで出かけていって、新しく生まれた男の子を見つけに行こうなどと考える人は少なかったと思われます。

何より、天の神ヤハウェの守りがあったことは確実です。

そして、この「男の子をナイルに投げ入れろ」というひどい命令によって、イスラエルのリーダーであるモーセが誕生することになりますが、この話は次回に。

2.私たちへの励ましと教訓

ヤハウェの守りを信じよう

新しいエジプト王は、イスラエルを恐れ、イスラエルを滅ぼそうと考えました。これは王が考えたことですが、その背後にサタンの働きが見えます。

天の神ヤハウェは、世界の人々を罪ののろいから解放して永遠の祝福を与えるため、アブラハム、イサク、ヤコブとその子孫イスラエルを用いることを計画なさいました。

しかも、創世記3:15では、アダムとエバが罪を犯した直後、人類を罪ののろいから解放するために、「女の子孫」と呼ばれる救い主が現れ、サタンを滅ぼすと預言なさいました。そして、その救い主は、ヤコブの四男ユダの家系から生まれることが、死の床についたヤコブによって預言されています。「王権はユダを離れず、統治者の杖はその足の間を離れることはない。ついにはシロが来て国々の民は彼に従う」(創世記49:10)

ですから、サタンはことのほかイスラエルを憎み、滅ぼそうとしています。

もちろん、これを黙って見過ごしになさるヤハウェではありません。あの手この手でイスラエルを守り、生き延びさせてくださいました。エジプトからだけでなく、その後も様々な攻撃をイスラエルは受けますが、未だに滅びていません。黙示録を読めば、世の終わりまでイスラエルが攻撃を受け続け、しかしヤハウェに守られ続けることが分かります。

私たちはイスラエルではありませんが、イエス・キリストの十字架と復活を信じたことで、天の父なる神さまの子どもにしていただきました。神さまがイスラエルを愛し、守ってくださっているように、あなたも神さまに愛され、守られています。

いろいろ意地悪を言われたり、されたりすると、気持ちが萎えてしまいます。この権威者に逆らったら、これからどうなるのだろうかと不安にもなります。しかし、天地をお造りになり、支配しておられる王の王、主の主が味方についてくださっているのだということを、決して忘れないでいましょう。

恐れの優先順位を整えよう

イスラエルの人々にとって、エジプトの王や政府は恐るべき存在でした。しかし、2人の助産師たちは、王よりもさらに天の神ヤハウェの方を恐れました。

これは、いつ天罰が下るかとびくびくしながら過ごしていたという意味ではありません。王の命令とヤハウェの命令が対立した場合、ヤハウェの命令の方を優先させるべきだということを知っていたという意味です。

イエスさまが弟子たちに対してこんなことをおっしゃっています。

ルカの福音書
12:4 そこで、わたしの友であるあなたがたに言います。からだを殺しても、あとはそれ以上何もできない人間たちを恐れてはいけません。
12:5 恐れなければならない方を、あなたがたに教えてあげましょう。殺したあとで、ゲヘナに投げ込む権威を持っておられる方を恐れなさい。そうです。あなたがたに言います。この方を恐れなさい。
12:6 五羽の雀は二アサリオンで売っているでしょう。そんな雀の一羽でも、神の御前には忘れられてはいません。
12:7 それどころか、あなたがたの頭の毛さえも、みな数えられています。恐れることはありません。あなたがたは、たくさんの雀よりもすぐれた者です。


マタイ10:29では「二羽の雀は一アサリオンで売っている」と言われています。つまり、五羽買ったら一羽はおまけについてくるということ。そんなおまけのような存在でも神さまは覚えてくださっています。まして、あなた方は……というわけです。

きっと2人の助産師たちは、「王の命令ではなく、神さまのみこころの方を優先しましょうね」と、互いに励まし合いながらイスラエルの赤ちゃんを守り続けたのでしょう。この世の権威に逆らうのは並大抵の勇気ではできません。私たちも、一人では打ち倒されそうになるかもしれませんが、互いに励まし合いながら、神さまのみこころの方を優先させていきましょう。

「もしひとりなら、打ち負かされても、ふたりなら立ち向かえる。三つ撚りの糸は簡単には切れない。」(伝道者4:12)

まとめ

時に、神さまのみこころだと分かっていることと、地上の権威が要求することが、相反することがあります。私たちは、勇気を持ってみこころの方を優先させましょう。それで困難がやってきても、決して神さまは見捨てず、そこから救い出してくださいます。

あなた自身への適用のためのディスカッションガイド


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