こんなかわいい子なのに

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(2011.8.14)

セミナーで出会った靖子さんは、鬱病の治療を受けています。いつも「自分が悪い」という思いに苦しんでいす。また、人から切り捨てられることが不安でたまりません。そして、ちょっとでも人との間にストレスを感じると、向こうに捨てられる前に、靖子さんの方から関係を切ってしまい、結果としてどんどん孤独になっていくのです。仕事も長続きせず、こんなことでは結婚もまったく考えられないとおっしゃいました。

これまでの病院での治療や、心理学セミナーでの学びを通して、これらの自罰傾向や人間不信が親子関係から来ているということが、靖子さんにも分かっていました。お父さんが情緒不安定な方で、いつも突然怒りだし、靖子さんのことを理不尽な理由で殴ったり、家の外に追い出したりしたのです。そして、お母さんは泣いてばかりで、康子さんのことを守ってくれませんでした。むしろ、靖子さんの方が、横暴なお父さんに悩まされるお母さんのことをいつも気遣っていました。

そう言いながら、靖子さんは、胃がひっくり返って吐きそうになりました。これはいつも感じる症状だそうです。胃のあたりに何かがいて、それが痛いのだとか。胃が痛いのではなく、「その何か」が痛がっているわけです。

大人になった今も、言ってみれば、ご両親が心の中に住んでいて、「今のお前じゃダメだ。また叩くぞ。追い出すぞ。それが嫌ならもっとちゃんとしろ。人に気を遣え。自分のことなんて後回しにしろ」……と責め立てているようなものですね。

1回限りのカウンセリングを依頼された私は、まずはイメージ法というやり方で対処することにしました。そういう責める両親(実際の両親ではなく、心の中の両親。病気を機に、お父さんはすっかり人が変わり、優しくなったそうです)を外に吐き出したいのかなと思い、「目をつぶって、ご両親がお腹のあたりにいるのをイメージして。それから、二人に『私の心の中から出ていけ!』と言いましょう」と申し上げました。

しかし、また激しく胃がひっくり返って倒れそうになりました。靖子さんは言いました。「かわいそうで、そんなこと言えません。二人とも弱いから」。

康子さんは、いつも泣いていたお母さんだけでなく、お父さんも弱い人だと分かっていました。ですから、ご両親に対する怒りを持っているのですが、それを表に出すことができません。「お父さんも、お母さんも弱いから、怒れない」。彼女はそう言いました。

靖子さんがクリスチャンだと知った私は、イエスさまに登場していただくことにしました。イエスさまがそのお腹のところにいらっしゃったイメージを持ってもらい、イエスさまが靖子さんやお父さんたちに何を言い、何をするかをイメージしてもらったのです。

イメージの中で、イエスさまは靖子さんに「もう大丈夫。私があなたを守るからね。あなたは大切だよ。そんな理不尽な怒られ方をしなきゃならないような、悪い子じゃないよ」と言い、抱きしめてくれたそうです。そしてお父さんたちには「大切な娘になんてことをするんだ。もっと優しくしなきゃダメじゃないか」と、お父さんをぼこぼこにしたそうです。

しかし、またすぐに胃がひっくり返りました。そして、「いいえ。やっぱり私がダメなんです。ちゃんとやれない私が悪いんです。お父さんやお母さんに優しくできない私が悪いんです」と言います。

イメージ法を中断し、私は言いました。「ここ(お腹)にいるのは、お父さんでもお母さんでもなく、靖子さん自身だよね。イエスさますら入り込めないくらい、靖子さんの思い込みが占領しちゃっているね。イエスさまが、あなたのことを大切だと言っても、絶対守ると言っても、靖子さんは『自分はダメ人間だ。こんな子は死んだ方がマシだ。もっとがんばらないとダメだ』という自分の考えの方を優先させてる。靖子さん、あなたはイエスさまに従って生きていきたいの? それとも自分の考えを優先させて生きていきたいの?」

靖子さんは「イエスさま」とおっしゃいました。「じゃあ、悔い改めよう」。そう促すと、靖子さんは祈りました。「イエスさま。今まで、自分中心に生きてきたことを悔い改めます。そして、これからは『お前は大切だ。わたしはあなたを愛している。絶対守って幸せにするから大丈夫』とおっしゃるイエスさまの声を聞いて生きていきます。私も、イエスさまが大切にしている私自身を大切にします」。

再びイメージ法を使いました。「ここに、生まれたばかりの赤ちゃんの靖子さんがいます。いらない子だから、捨てちゃう? 何もできないから捨てちゃう? そんなことしないよね。さあだっこして。優しくなでてあげて。どう?」 靖子さんは、赤ちゃんを受け取り、だっこする仕草をしました。そして「かわいい」と言いました。「今まで、こんなかわいい子のことを、私は『お前はダメな子。いらない子。ちゃんとやれないなら死んじゃえ』っていたぶってきたんですね。でも、これからこの子のことを大切に育てます」。

そうして、その子を、お腹のところに戻してあげました。

翌日、再びセミナーでお目にかかったので尋ねてみると、あれ以来ひどい落ち込みや胃の痛みが無くなったそうです。そして、喜びが心を満たしているのが分かるとおっしゃいました。

カギは悔い改めでした。さて、あなたは、何を悔い改めなければなりませんか? イエスさまの約束よりも、あなたの考えの方を優先していませんか?

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