スクールソーシャルワーカーだより

子育てのヒント1

お子さんが、家のお手伝いや困っている人のお手伝いを喜んでする、積極的で優しい人に育って欲しい。それは、親としての当然の願いだろうと思います。では、そのためには、親としてどんな子育てを心がければよいのでしょうか。

 

今回は、あるお母さんの、お嬢さんへの関わりを紹介します。

 

お子さんへの接し方のヒントにしていただければ幸いです。

佳子ちゃんのケース

朝食が済んだ後、お母さんは洗濯物を干しに庭に出て行きました。すると、幼稚園年長組の佳子ちゃんは、お母さんに何も言われていないのに、自発的にお母さんと自分の食器を流しに持って行き、洗い始めました。

 

ところが、小さい子どものすることです。水の勢いが強すぎて、シンク周りや床がびしょびしょになってしまいました。そして、固まったご飯粒をきちんと取り除くことができず、ご飯がこびりついたままのお茶碗を洗いカゴに置いたのです。

 

さて、お母さんが庭から食卓に戻ってきました。そして、びしょびしょの床を発見します。そして、佳子ちゃんに一言。いったいどんな言葉を投げかけたと思われますか?

 

「なによこれ! 床がびしょびしょじゃないの! レンジの方にまで水を飛ばして、火がつかなくなったらどうするの! それに、まだお茶碗にご飯粒が残ってるじゃないの。それなのに洗いカゴに入れたら不潔じゃない! 誰が洗ってって頼んだのよ! まったく、余計なことして、この忙しいときに!」

 

そして、ぶつぶつ言いながら、床を拭き、お茶碗を洗い始めたとしたら……きっと佳子ちゃんは、二度と自発的にお母さんのお手伝いをしようとは思わないことでしょう。理由はおわかりですね?

 

しかし、このお母さんの対応は違いました。お母さんは、にっこり笑ってこう言ったのです。「あらー、佳子ちゃん。言われないのに自分から洗い物をしてくれたのね。お母さん助かるわぁ。お母さんを助けてくれるなんて、佳子ちゃんって優しいなあ。お母さん、感激しちゃった。ありがとう!」 そして、ぎゅっと佳子ちゃんを抱きしめました。それから、佳子ちゃんを幼稚園に送り出してから、床やお茶碗の始末をしました。

 

次の日、お母さんは、「今度は一緒に洗い物をしようね」と、佳子ちゃんを誘いました。そして、「水はこれくらいの量で十分だよ」とか「ご飯粒は固まっているから、最初に水につけておくと、後で取れやすいんだよ」と、一つ一つ正しいやり方を教えました。もちろん、「昨日は、びしょびしょにしたでしょう?」なんて余計なことは言いません。

 

今、佳子ちゃんは、家事や困っている人のお手伝いが大好きな、優しくて積極的な小学生です。

加点法

日本の教育は、主に「減点法」でなされてきました。これは、現時点での子どもの理想状態を百点として、そこからどれだけ足りないかを評価し、足りない所を再指導するというやり方です。

 

この方法は、非常に効率がいいのですが、足りない所を指摘するので、どうしても自信とかやる気とかを育てにくいという副作用があります。その結果、監視して命令したり叱ったりしないと望ましい行動をしなかったり、言われなくても行動するような積極性を持てなくなったりするのです。減点法自体は悪くありませんが、そればかりではバランスが欠けてしまいます。

 

私たちは、自分が育てられたように子どもを育てますから、知らず知らずのうちに減点法で子どもや部下や後輩に接してしまいがちです。すなわち、足りない所に注目し、それを叱って矯正しようとするのです。

 

しかし、佳子ちゃんのお母さんは、「加点法」で接しました。すでにできている所、うれしいと感じられる所、さらに伸ばして欲しい所に注目したのです。そして、それを指摘しました。

 

人は、注目された所が伸びるという性質を持っています。お子さんのマイナス面でなく、プラス面を意識して注目してみてください。そして、「あなたにはこういう所があるね」と指摘してみましょう。きっとお子さんはその良い面を伸ばしていかれますし、ご自身のストレスも軽くなるはずです。

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