スクールソーシャルワーカーだより

問題行動をやめさせるには その3

子ども(子どもだけではありませんが)の困った行動をやめさせ、望ましい行動をとるようにさせるにはどうしたらいいかという話の第3回目です。

 

今回の、キーワードは「ストローク」です。

ストロークとは

ストロークとは、アメリカの俗語で「なでる」という意味です。心理学では、「人が人に送るあらゆる刺激」のことを言います。なでる、つつく、叩く、蹴飛ばす、肩を抱く、ほほえむ、見つめる、あいさつする、ほめる、叱る……などです。

 

ストロークには、プラスとマイナスがあります。プラスのストロークは「もらうとうれしい刺激」で、マイナスのストロークは「もらうと嫌な気持ちになる刺激」です。

 

叱られるというのは、普通は嫌なものですが(マイナスのストローク)、もし本人が「ちゃんと見てくれている。期待されている。うれしいな」と感じるなら、それはプラスのストロークです。ストロークを送る側がどういうつもりかではなく、あくまでも受け手がどう感じるかがポイントです。

 

また、ストロークには、条件付きのものと無条件のものがあります。「100点取ったら小遣いアップ」とか、「ケンカしたからおやつ抜き」というふうに、ある条件を満たしたときにもらえるのが条件付きのストロークです。そして、条件なしにもらえるのが無条件のストロークです。

ストロークの法則

ストロークにはいくつかの法則があります。

 

(1) ストロークを十分にもらえないと、人はマイナスのストローク集めを始める

ストロークをもらえないというのは、存在が無視されている状態です。いてもいなくても同じ。死んだって別にかまわない。そういう扱いを受けているということですね。これは非常につらい状況です。

 

人は飢餓状態になると、豊かなときには決して食べないような雑草や木の皮なども食べようとします。それと同じで、ストローク飢餓になると、人はマイナスのストローク集めをし始めます。すなわち、周りの人に迷惑をかけるような言動をし、怒りや暴力を引き出すのです。もちろんいい気持ちではありませんが、無視されるよりはずっといいわけです。

 

(2) 条件付きのプラスのストロークばかりだと、人は他人や世界に対して敵意を抱く

条件付きのストロークは、しつけには不可欠です。しかし、こればかりだと子どもは「無条件に大切にされていない」と感じ、怒りを抱きます。そして、復讐を始めます。すなわち、周りの大人が困るようなことをするのです。

 

(3) 無条件のプラスのストロークをもらうと、人は変化成長する

ひどいいたずらや非社会的な困った行動を繰り返すお子さんは、もしかしたらマイナスのストローク集めが癖になっているのかもしれません。あるいは復讐をしているのかもしれません(ほとんどのお子さんは、そんな目的を意識していませんが)。

 

困った行動に対して、もちろん指導はしなければなりません。しかし、ただ叱るだけでは、お子さんの思うつぼです。すなわち「マイナスのストロークが欲しい」「周りの大人を困らせたい」という目的にばっちりはまってしまいます。そして、「この手は使えるぞ」と学習させることになりますから、ますますマイナスのストローク集めがエスカレートすることになります。

 

困った行動を繰り返すお子さんは、本当は「無条件のプラスのストロークがもっとたくさん欲しい」と心の中で叫んでいるのです。本当は、雑草や木の皮なんか食べたくありません。おいしくて、栄養のあるものが食べたいのです。

 

ですから、無条件のプラスのストロークをたくさんあげてください。そうしたら、マイナスのストローク集めなんかしなくていいんだということを学習し、不適切な言動も次第に収まってくるでしょう。

 

これまでは当たり前だと思って見過ごしにしてきた、普通にやれていることに注目して、いっぱいほめてください。抱きしめてあげてください。返事をしてもしなくても、あなたの方から元気にあいさつしてください。最初は「キモイ」と言われようと、「大好きだよ」と言ってあげてください。一緒に遊んであげてください。

 

どうしてあげたら、何を言ってあげたら、この子が「いい気持ち」になるかなということを考えて、それを実践してください。そして、それを続けてください。

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