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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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〒969-1302 福島県安達郡大玉村玉井西庵183

コミュニケーションの達人への道


2012年11月号
ある高校生からこんな相談を受けました。
自分はコミュニケーションが下手で悩んでいます。
よく友だちや親と行き違いが生じて、嫌な思いをしたりさせたりしてしまいます。
どうしたら、もっとうまく会話ができるようになりますか?
私は答えました。「話というものは、通じないものなんだ、ということを知ることだよ」。

これだけでは何のことやら分からないと思いますので、もう少し詳しくお話ししましょう。

脳内フィルター

皆さんは、バンジージャンプをやったことがありますか? 私はありません。やりたいとさえ思いません。高所恐怖症だからです。しかし、人によっては、ドキドキ・ワクワクする素晴しい体験だと言います。同じ状況に置かれても、人によってまったく違った感情を持ちます。

それは、私たち人間は、外界の情報をそのまま取り込んでいるのではなく、いくつものフィルターを通して取り込むからです。青い色眼鏡で世界を見れば世界が青く見え、赤い色眼鏡で見れば赤く見えるようなものです。

私たちの脳内フィルターは、たとえば五感(生まれつきの障がいがなくても、人によって視覚優位だったり、聴覚優位だったりして、違いがあります)、それまでの経験、価値観や信念などです。

人が普通にお酒を飲んでいるのを見て、「楽しそうだなあ」と感じる人もいますが、たとえば小さいときに親のアルコール依存症で苦労したような人であれば、嫌悪感とか恐怖心とかを抱くかも知れませんね。それは、経験のフィルターを通るときに「飲酒=望ましくないもの」という意味づけがされるからです。

ですから、AさんとBさんが会話しているとして、Aさんがこういう意味でしゃべったことでも、Bさんがそれを聞き、脳内フィルターを通すうちに、まったく違う意味に受け取られるということが、よく起ります。

脳内辞書というフィルター

会話や発言の中で、人は様々な単語や表現を使いますが、たとえ同じ日本語を使っていたとしても、厳密にはそれぞれ人によって使っている意味が異なります。同じ「ちゃんとする」という表現でも、「何をどうすることがちゃんとすることなのか」という解釈が、人によって違うということです。

Aさんは、自分の脳内辞書に従って発言します。しかし、それを聞くBさんは、自分の脳内辞書を使ってその発言を解釈します。

怖いのは、二人の辞書がかけ離れているのに、Aさんは「ちゃんと伝わっているはずだ」と思い込み、Bさんも「Aさんはこういう意味で言っているんだろうな」と思い込んでいる場合です。こうなると、いわゆる「話が通じない」状態、コミュニケーションギャップが生じてしまいます。

そうして、お互い最初はケンカなどするつもりがなかったのに、「あいつは失礼なことを言った」「こちらのやることなすこと、全部ケンカを売っているように受け取られた」という状況に陥ってしまい、トラブルに発展してしまいます。

話は通じないものである


ですから、「そもそも、話というものは、通じないものである」ということを自覚すること、すなわち
自分は相手の言っていることや行動していることの意味を正しく解釈しているとは限らないし、相手にもこちらの言動の意味が、こちらの意図したとおりに伝わっているとは限らない。
というふうに、いつも心の片隅で警戒しておくことが大事なのです。

不思議なもので、日本人同士よりも、片言の日本語しかしゃべれない外国人相手の方が、上手くコミュニケーションが取れる場合があります。それは、「相手はこちらのしゃべっていることを理解できないかも知れないし、逆にこちらも相手の言いたいことを完全には理解できないだろう」と思っているからです。

そして、どうしたら上手く伝わるだろうかと必死で考え、あの手この手で伝えようとしますし、相手が語っていることも、いろいろ質問しながら一生懸命に聞こうとします。ですから、かえって話が通じるわけです。

話が通じてないなと思ったときは、「どうして分かってくれないの?」と相手を責める前に、「どう表現したら相手に伝わるだろうか」と考えて表現をあれこれ工夫してみましょう。

また、相手の言動にかちんと来たり傷ついたりしたときも、「自分は相手の言動を正しく解釈しているだろうか。もしかしたら、相手は善意や好意で行動しているのかも知れない」と考え直してみましょう。

自分のコミュニケーション能力を疑ってみることが、コミュニケーションの達人への道です。

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増田泰司(ますだたいじ)

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