スクールソーシャルワーカーだより

加点法的アプローチ

4月号の最後で、次回は「お子さんの、ほめるポイントの探し方」についてお話ししますと書いておきながら、5月号では魔女の呪いの話を書いてしまいましたので、今回はそのテーマでお話しさせていただきます。

2つの評価法

私たち大人が子どもたちに対して行なう教育、しつけ、指導は、単なる自己満足ではなく、本当に効果を上げるものでなければなりませんね。そのためには、教えっぱなしにしないで、指導を受けた子どもたちの行動を評価し、自分の行なった指導方法の効果を検証する必要があります。そして、うまくいっていればそのまま続け、うまくいっていなければ、原因を探って方法を修正しなければなりません(2013年3月号参照)。

 

子どもたちの達成度を測る評価法には、大きく分けると2つあります。1つが「減点法」、もう1つが「加点法」です。

 

減点法

減点法では、一定期間内に(たとえば小学校5年生の1学期中に、など)身につけておくべき態度や、習得すべき能力などを挙げて、それが完璧に達成されている理想状態を100点満点とします。そして、その期間が終わった段階で、その満点状態(理想状態)からどれだけ達成「できていないか」を測るやり方です。具体的には、試験などで達成度を測ります。

 

このやり方のメリットは、できていないところが明確になりますので、遅れをカバーするのに効率がいいという点です。できていないところを集中的に復習すれば、より成長することができます。もちろん、評価しっぱなしでは意味がなく、未達成の部分をどのようにカバーするかを考えて実践しなければなりません。

 

また、全員同じ理想状態を元に評価しますから、他の子と比較しやすく、グループ全体の中でのその子の位置を把握しやすいというメリットもあります。ただし、できなかったところに注目しますから、どうしても自信にはつながりにくいという副作用があります。

 

加点法

一方、加点法では、まず評価する期間の最初の状態を0とします。そして、その期間が終わった段階で、それぞれの子どもがどれだけの能力や態度を身につけたかということを挙げていきます。

 

加点法では、最初の達成度(ゼロ位置)が一人一人違いますから、他の子どもと比較することは難しいです。しかし、減点法に比べると、できたことに注目しますから、自信にはつながりやすいというメリットがあります。

加点法を意識してみよう

減点法も加点法も、それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが優れているということはありません。教育やしつけの現場では、両方を上手に利用しなければなりません。

 

ただ、私たち日本の家庭や学校では、どちらかというと減点法的な関わりが多くなされています。人は自分が育てられたように人を育てようとしますから、減点法に関してはみんなエキスパート。特に意識しなくても使うことができるでしょう。

 

そこで、加点法を意識して、子どもたちに関わってみてください。すると、ほめるポイントが必ず見つかります。ほめるポイントが見つからないというのは、減点法的な見方をしてしまうから、すなわち、その子の理想像とその子の実像とを比較するからです。あるいは、あなたが思い描いている理想状態に近い他の子どもと比較するからです。すると、ほめるどころか叱りたくなりますね。

 

比較するなら、1年前、半年前のその子と比較しましょう。必ず、できるようになったこと、望ましい方向に伸びていることがあるはずです。

 

あなた自身も伸びている

加点法に慣れるために、まずご自身を加点法で評価してみてはいかがでしょうか。仕事でも、家事でも、趣味でも、子どもへの関わりでも、生活習慣でも、体重や血圧でも、1年前と比べて望ましい方向に少しでも変わっているものがありませんか? ほんの少しの前進でもかまいません。それらをできるだけたくさんリストアップしてみましょう(実際に紙に書くといいです)。

 

そして、それを1つ1つ声に出して読み上げ、そのたびに「良くやった」「がんばったね」と自分をほめてみましょう。きっと、心がほっこりとして、お子さんのことももっとほめたいという気持ちになることでしょう。

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