スクールソーシャルワーカーだより

窓が割れたらすぐ取り替えよう

前回は、「人の値打ちは中身ですが、対人関係においては見た目とか言葉遣いとかの外面的な印象も大切だから、両方磨きましょう」という話でしたね。今回は、その続きです。

 

自分の見た目とか内面とかを、いきなり大きく変えるのは難しいでしょうが、身の回りの小さなこともおろそかにしないで、丁寧に扱っていくようにすると、人間関係も改善し、いわゆる運気も開けます。今回はそんなお話です。

割れ窓理論

かつて、ニューヨークといえば犯罪都市として世界に知られていました。そして、1994年にジュリアーニ氏が市長になると、彼は心理学で言うところの「割れ窓理論」を活用することで治安の回復を目指しました。

 

割れ窓理論とは、「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、まもなく他の窓も全て壊される」という経験則です。それを治安問題に適用すると、

  1. 落書き、ポイ捨て、未成年者の喫煙、ゴミの分別無視、軽微な交通違反など、一見それほど深刻に思えないような軽犯罪やルール違反を見逃したり、放置したりする。
  2. すると、人々は、「この地域では、これくらいなら許されるんだな」と思うようになる。
  3. そして、人々は、ルール違反や罪を犯すことに関して、次第に抵抗がなくなっていく。
  4. こうしてルール違反や犯罪が増えていくため、遵法精神に満ちた人たちは嫌がって地域を離れていき、ますます道徳的に麻痺した人たちの割合が増えていく。
  5. やがて、殺人などの凶悪な犯罪が当たり前のように発生する地域になる。

そこで、割れ窓理論では、「一見それほど深刻に思えないような軽犯罪やルール違反をしっかり取り締まれば、凶悪犯罪も減少するだろう」と考えます。ジュリアーニ氏はこれを応用しました。

 

ジュリアーニ氏の施策で象徴的な行為とされているのは、地下鉄の電車や駅にあった落書きの取り締まりと浄化です。また、警察官を増員して地域のパトロールを強化したり、交通違反や軽犯罪の取り締まりを厳しくしたりしました。すると、まもなく治安が劇的に改善し、就任後の5年間で殺人が67.5%、強盗が54.2%、婦女暴行が27.4%も減少しました。

 

要するに、割れ窓理論とは、「これくらい些細なことだというような小さなことも、実はおろそかにしてはいけないのですよ」ということです。

小さな秩序を大切にする

私はいわゆる風水は全く信じていませんが、部屋や机をこまめに片付けたり、タンスや引き出しの中をこまめに整理整頓したり、服装を清潔できちんとしたものに保ったりすることは、幸せな人生を送る上で大切だと感じています。

 

病的にきっちりしすぎるのは息が詰まります。だからといって、部屋は散らかり放題、服は新しいものも古いものもごっちゃになって椅子や床の上に放置、(ファッションとしてあえてそういう格好をしているのではなく)服や靴が汚れていたり穴が開いていたりしても気にしない……。そうやって自分で自分の生活の小さな秩序をないがしろにするのはちょっと問題です。

 

もちろん、そうしたからといって、警察に捕まるわけではないし、生活が即破綻するわけでも、友人関係が破綻するわけでもないでしょう。しかし、長い目で見ると、やっぱり幸せから遠ざかっていくのです。割れ窓理論が働くからです。

 

まず、こういう生活や態度を平気でしていると、他の人たちから「この人はあまり自分を大切にしない人だ」というふうに無意識に判断されてしまいます。すると、おそらく周りの人たちからあまり大切にしてもらえなくなります。それどころか、「窓が割れているのに放ったらかしだ。だから、もっと割ってやれ」というひどい扱いを受けることになるかもしれません。また、そのような家庭で育つ子どもたちも、割れ窓理論の影響を受け、どうしても守らなければならない秩序やルールまで軽視するようになるでしょう。

 

面倒だなと思っても、ちょっとだけ努力して、身の回りを秩序あるものに整えてみてください。

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