スクールソーシャルワーカーだより

子どもは親の評価に応えます

今回は、私たちがどんなふうに子どもたちを見つめているか、そのまなざしについて考えてみましょう。

 

三浦綾子さんと嘘つき

「氷点」や「塩狩峠」を書かれた作家の故・三浦綾子さんが、ある時、唐突に秘書の方にこんなことをおっしゃったそうです。

 

 

ねえ、嘘つきって、とても創造性豊かな人よね。

 

驚いて思わず三浦さんの顔を見つめる秘書さんに、その理由をこんなふうに説明なさいました。「だって、無いものを本当にあるみたいに作り出すことができるんですもの。まるで作家や芸術家みたいね」。

 

これを聞いた秘書さん、非常に感銘を受けます。というのは、最近ご自分のお子さんが嘘をつくことが多くなり、密かに悩んでいたからでした。「嘘つきは泥棒の始まり」。このままでは、この子は将来ろくな人生を送らないだろう。そう思って厳しく指導するのですが、なかなか改まりません。そんな折、三浦さんにはお子さんの嘘について相談したことがなかったのに、「嘘つきは創造性豊かだということ」という話をされたのでした。

 

それ以来、秘書のさんの、お子さんを見る目が変わりました。もちろん指導はしますが、決して「この子はしょうがない子だ」とは思わなくなったそうです。すると、お子さんは本当に創造性豊かに育っていき、やがて芸術の道に進んでいかれました。

 

どうやら人というものは、周りの人たちの評価に応える性質があるようですね。

 

お願いだからいい子になって

「人は周りの人たちの評価に応える」と申し上げましたが、ここで言う評価とは、今目の前にいる現実のその人、その子についての評価であって、「こんなふうになれたらすてき」「こんな人間になったらすばらしい」という理想的な将来像への評価ではありません。

 

ある親御さんが、お子さんに対していつも「お願いだからいい子になって」と言って育てました。このお子さんは、成長して立派な(?)やくざになりました。どうしてでしょうか。親の評価に応えたからです。「お願いだからいい子になって」ということは、「今のお前はルールを守らないダメな子だ」と評価しているということですからね。

 

プラスからプラスの指導

誰かを指導したり励ましたりする場合、相手に対する視点が2種類あります。

  • ひとつはマイナスからプラスに引き上げようとする視点
  • もうひとつは、プラスからさらなるプラスに引き上げようとする視点

です。

 

  • 「あなたはダメ。だからこうしなさい。そうしたらすばらしくなれるから」というのがマイナスからプラスの視点
  • 「あなたはすでにすばらしい。だからこうしたらもっとすばらしくなれる」というのがプラスからプラスの視点

です。

 

先日、小学1年生くらいのお兄ちゃんが、5歳くらいの妹を蹴っ飛ばし、泣かしてしまった場面に遭遇しました。どうやら妹がお兄ちゃんのおもちゃを勝手にいじろうとしたようです。お母さんが妹をなだめている間に、お父さんがお兄ちゃんを指導しました。「Aくん。君は優しい子なんだから、嫌なことをされたときは、叩いたり蹴ったりしちゃいけない。言葉を使ってどうして欲しいかを言おうな」。「お見事!」と、思わず心の中で拍手しました。

 

「妹を蹴っ飛ばすなんて、お前はなんて乱暴者なんだ。妹には優しくしなさい。嫌なことがあったら叩いたり蹴ったりしないで言葉で言いなさい」でも、同じことを指導しています。しかし、これではもしかしたら「お前は乱暴者」という評価が、お兄ちゃんの心にすり込まれてしまって、お父さんの意図に反してますます乱暴な言動を引き出していくようになるかもしれませんね。

 

同様に、行動が遅いお子さんに「グズ。早くしろ」と言っていると、ますますグズになるだけでしょう。むしろ、物事をていねいに行なう持ち味があることを認めてあげてはいかがでしょうか。あるいは、いくらグズだと思われているお子さんでも、時間通りに行動できるときが必ずあるはずです。そういう普通にできたことを「そんなのはできて当たり前だ」などと無視したりしないで、しっかり指摘して、「早く準備ができたね。その分たくさん遊べてうれしいね」などと認めてあげてはいかがでしょうか。

 

私たちが子どもたちをどう評価しているか。その視点が子どもたちの持ち味を引き出します。

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