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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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なぜそれをするのか


2015年7月号
前回は、教える内容を、知識と技術に分けてみましょうという話をしました。今回の話のテーマは、人に何かの技術を教えたい場合には、What(何をするのか)とWhy(なぜそれをするのか)の両方を伝える必要があります、ということです。

こちらは相手の行動を変えたいわけですから、どんな行動をして欲しいのか(What)を明確に、すなわち誤解させないように伝えることが大切なのは当然ですが、そうすることが必要な理由(Why)も一緒に伝えることも大切です。それは「なぜ」でしょうか?

押しは相撲の極意、なの?

日本体育大学(日体大)の教員である齋藤一夫さん(医学博士。武道学科教授)は、平成16年に相撲部監督に就任なさいました。当時の学生相撲界では、別の大学がダントツの強さを誇っていました。その大学の相撲部にはインターハイで上位に入るような新入生が入ってきますが、日体大相撲部に入ってくるのは実績も体格も見劣りする子たちです。そんな彼らを、たった4年間で全国優勝できるレベルにまで成長させるにはどうしたらいいか、齋藤さんは考えました。たった4年、しかも学業と平行しながらの練習でできることは限られています。

考えた結果、齋藤さんは、学生たちにもっぱら押し技を練習するように指示しました(What)。また、どうして押し相撲に徹するのか、その理由もしっかりと語って聞かせました(Why)。

押し技ばかり練習する理由

昭和63年、日体大3年生だった齋藤さんは、全日本相撲選手権で優勝してアマチュア横綱となりました。多くの人が、卒業後は大相撲の世界に入ってプロ力士になるのだろうと思っていました。ところが、齋藤さんは研究者の道を選んで大学院に進学します。それは、疑問に思ったことはとことん突き詰めて考えないと気が済まない、持ち前の性格のせいだったそうです。

柔道には「押さば引け、引かば押せ」という格言がありますが、相撲では「押さば押せ、引かば押せ、押しは相撲の極意なり」と言われるそうです。ところが、齋藤さんはこの相撲界の常識を「本当にそうなのか?」と疑ってしまったのです。

そして、膨大な数の勝負を分析して、勝負を決めた技の前に、どんな技を使って相手の体勢を崩したのか、その組み合わせを調べ、「相撲の崩し技と決まり技の分布の統計学的検討」という論文を書き上げます。

それによると、相手を押し込んで体勢を崩した場合には、相手を横に崩したり、引いて崩したりする場合に比べて、寄り切り・押し出し・上手投げ・下手投げ・小手投げ・はたき込みなど、より多くの技につながることが明らかになったのです。すなわち、相手にしてみれば、次にどんな技が来るのか絞りにくく、対処が難しいということです。そして、いったん相手を下から上に押し上げて腰を浮かせてしまえば、相手はもう踏ん張りがきかなくなりますから、あとは自分の好きな技で好きなように料理することができます。齋藤さんは、やはり先人の言葉は正しかったのだと、科学的にも納得したのでした。

学生たちも、齋藤さんの説明を聞いて、どうして押し技ばかり練習させられるのか心から納得しました。これを身につけることができれば、勝負に勝つことができる。あの常勝相撲部を打ち負かすことさえできる。そう思えることができた学生たちは、熱心に練習に励みました。

その結果、監督就任4年目の平成19年、全国学生相撲選手権で念願の団体優勝を果たし、それ以降何度も学生日本一に輝いています。また、個人戦でも学生横綱を何人も輩出しています。

指示と同時に、理由も伝えてみよう

子どもが小さいうち(幼稚園くらいまで)は、まだ将来を見越して今の行動を決める力が未発達ですから、周りの大人が理由を説明せずに「これをしようね」と指示することも大切です。それによって、多くの望ましい行動を習慣化させるためです。幼い頃に身につけた習慣は、それが望ましいものでも、良くないものでも、なかなか抜けません。三つ子の魂百までも、です。

しかし、小学生にもなれば、だんだんと「なぜこんなことをしなきゃいけないのか?」と、科学的な疑問を持つ力が育ち始めます。ですから、ただ望ましい行動を指示するだけでなく、どうしてそれをするといいのか、その理由も添えてあげるようにするといいでしょう。その方が、相手のやる気を引き出すことができますし、実行するのにつらかったり、飽きてきたりしても、続けていく根気を引き出すことができるからです。

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