スクールソーシャルワーカーだより

知識と技術

今年度は、「教えるための技術」について書かせていただいています。今回のテーマは、教える内容を、まず「知識」と「技術」に分けてみましょうという話です。

 

知識と技術の違い

教える内容は、知識と技術に分けることができます。知識とは「尋ねられたら答えられること」であり、技術とは「やろうと思えばできること」です。たとえば、「先月のスマホの通信料」や「サッカーのオフサイドのルール」は知識であり、「スマホの通信料を先月より1,500円セーブする」や「敵のフォワードをオフサイドトラップにかける」は技術です。

 

知識と技術を分けてみることのメリットは、教えたことがちゃんと身についたかどうかを確認する(評価する)方法が明確になるからです。

 

知識の評価

知識については、「○○について説明してください」と尋ね、正しく答えられたらOK、答えられなかったらNGです。

 

技術の評価

技術については、実際にやっているかどうかを観察したり、目の前で意識してやらせてみたりして、できるかどうかを評価します。場合によっては、親や教師や上司が評価するのではなく、自己評価させることもできます。

 

技術を観察する際は、理想的な行動をあらかじめリストアップして、チェックリストにしておき、それぞれ「大変良くできた・良くできた・まあまあ・あまりできなかった・全くできなかった」の5段階評価するといいでしょう。

 

そして、結果を見て、どれを重点的に身につけさせるかを決め、優先順位の高いものから順番に練習させます。人間は、一度にたくさんのことは意識できません。ひとつずつしっかりと意識しながら実践させた方が、結果的に早く身につきます。

チェックリストの作り方

スポーツでも芸術でもマナーでも身支度でも、様々な小さな行動が積み重なることで、ひとつの理想的な結果が生まれます。4月号で「名選手、必ずしも名コーチならず」という話をしましたが、「できる人」は、一つ一つの小さな行動を意識しなくても、うまくやれてしまいます。そこで、かえって他の人に教えることができなかったりするのです。というわけで、チェックリストを作るメリットは、教える側が、「何を教えるべきか」が明確になることです。すると、根性論に逃げることなく、効果的な指導ができます。

 

なお、望ましい行動のチェックリストを作る秘訣は、その分野について「良くできている子」を外から観察し、望ましい結果を生み出すために、どんな小さな行動を行なっているかということを学ぶことです。

 

チェックリストを作るのは大変ですが、一度作ってしまえば、他の子どもの技術を評価するのにも使えますから便利です。部活動などでリストを作っておけば、毎年使い回しができますね。

 

評価は誰のためにするのか

評価は、教わる子どもや生徒のためにだけ行なうのではありません。教える親や教師のためにも行ないます。すなわち、自分の教えた内容や方法が適切だったかということを確認するためです。もし、子どもが必要な知識を身につけていなかったり、適切な技術を身につけていなかったりすれば、それは教え方のどこかが不適切だったか、そもそも何を教えるかが明確になっていなかったかでしょう。そのような場合には、教え方や内容を検討した上で、再度教えなければなりませんね。

 

 このような考え方をすることは、親や教師や上司など、リーダーの精神衛生にも益します。子どもや部下のやる気や性格のせいにすると、イライラしたり、馬鹿にされているような気になって傷ついたりします。しかも、他人のやる気や性格を変えるのは至難の業なので、そこを問題にすればするほど、指導者は無力感でいっぱいになります。あなたも、どうせなら「楽しい子育て」や「楽しい指導」がしたいでしょう? であれば、相手のやる気や性格ではなく、こちらの「教え方や内容」に注目してみてください。

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