スクールソーシャルワーカーだより

根性論

6月号で「チェックリストを作るメリットは、教える側が、『何を教えるべきか』が明確になることです。すると、根性論に逃げることなく、効果的な指導ができます」と申し上げましたが、この点についてもう少し詳しく教えて欲しいというメールをいただきました。特に質問者が引っかかったのは「逃げる」という言葉のようです。根性論のどこが悪いんだい、というわけです。

 

根性論自体は悪くありません

私は「巨人の星」や「エースを狙え!」などのスポ根漫画を読んで育った世代ですから、「気合いだ。やる気だ。根性だ!」という根性論、それ自体が悪いとも嫌いだとも思いません。むしろ、ここぞという大事な場面を左右する大事な要素だと思っています。

 

ただ、指導されている子どもたちは、「どんな行動をとると、根性があると認めてもらえるか」ということについて分かっていないことが多いんじゃないか。私はそう考えているのです。こちらの言っていることが相手に理解されなければ、どんなに熱心に教えても、指導や教育は成り立ちません

 

高校野球部の例

以前、心理学の学校の講師をやっていた時のことです。同僚たちとある私立学校(幼稚園〜高校+専修学校)の先生方の研修を、5年間担当したことがあります。女子校から共学校に変わって間もないその学校では、高校に硬式野球部ができたばかりでした。

 

そして、この高校は創部3年目で甲子園に出場し、いきなり準優勝を果たして、今でもたびたび甲子園に出場して活躍しています。私立校だから、お金を使って良い選手をかき集めたんだろう? いえいえ。準優勝直後にうかがった研修会の際、園長先生がこっそり教えてくださいました。「無名校の、しかもできたばかりの運動部になど、どんなにお金を積まれても良い選手は集まりません。みんな実績のある強豪校に行ってしまう。うちのチームは、実は三流選手の集まりだったんですよ」。

 

それがなぜこんなにも短期間に強豪校の仲間入りを果たしたのでしょうか。園長先生は、もちろん選手たちの努力もあったけれど、監督の指導もすばらしかったとおっしゃいました。研修会には、野球部の監督も参加してくださいましたが、この監督は素直で研究熱心な方でした。研修で学んだことを参考に、指導する際の言い方を具体的に考え、変えていかれたのです。

 

創部当初は、この監督は野球部員に対して「ダラダラするな!」というような言い方をしていました。それを「集合する時には、走って集まりなさい。そうすると、チーム全体の士気が高まって、練習効率も上がるから」というふうに変えました。7月号で申し上げたように「なぜそれをするのか」という理由も添えて、具体的にどう行動すればいいかを、この監督は伝えるようにしたのです。また、ランニングで息が上がってつらそうな顔をしている選手には、「気合いを入れろ!」ではなく、「遅くていいから、立ち止まらないでもう一周回ってきなさい」と、これまた具体的に行動な行動を求めました。

 

そして、選手が自分やチームの成長のために望ましい行動を取ったときには、それがどんなに些細なことであっても、すかさず指摘して、ほめました。その結果、選手たちは自信を養われながら、着実に一歩一歩成長していくことができたのでした。

 

どんな行動を求めていますか?

私たちが子どもを叱りたくなったり、あれこれ口出しをしたくなったりするときは、今の子どもの行動に不満があるとき、あるいは「このままいったら大変なことになりそうだ」と心配しているときでしょう。そんなときは、少し時間を取って整理してみてください。最初は紙に書き出した方が、うまく整理できます。そして、整理された内容を伝えるようにしましょう。すると、相手がその通りにできるかどうかは別として、少なくとも何を要求されているかは理解されやすいでしょう。

 

  1. 相手のどんな行動が問題だと思っていますか? 気合いが足りないとか、やる気がないとかいう気持ちや態度ではなく、「行動」に注目してください。「この子は気合いが入っていない」「やる気がない」と判断したのは、その子がどんな行動を取っていたからか、ということです。
  2. その行動について、どうして問題だと思ったのでしょうか?
  3. 代わりに、相手にどんな行動を取ってもらいたいですか? これも具体的な「行動」の形で表現してください。あの監督さんのように。
  4. それをしてもらえると、自分にとって、あるいは相手にとってどんなメリットがありますか? 7月号で申し上げた、「それをする理由を添える」ということですね。

 

こうして行動の形に翻訳しながら伝えていけば、大切な子どもたちの「根性」も育てていくことができるようになります。

2015年9月号関連ページ

2015年4月号
子どもを望ましい方向に育てるためには、教えるための技術を身につけていなければなりません。
2015年5月号
その分野の素人でも、教えることが可能なのでしょうか?
2015年6月号
教える内容を、ひとまず2つに分けてみましょう。
2015年7月号
技術を伝える際には、Whatだけでなく、Whyも伝えると、やる気や根気を引き出せます。
2015年10月号
私たちは、子どもたちの「選択する力」を育ててやっているでしょうか?
2015年11月号
子どもの問題行動をどう治め、望ましい行動をどう伸ばしていったらいいのでしょうか?
2015年12月号
カルトは怖い。その活動はとても認められたもんじゃない。でも、彼らが利用している原則自体は、子育てに十分応用できるのでは?
2016年1月号
「なんで」「どうして」という言葉は、使い方によってはかなり危険です。
2016年2月号
子どものビデオゲーム利用時間と、知能発達の関係についての話です。
2016年3月号
同じことを指示したり指導したりするのでも、言い方一つで効果が大きく違ってきます。