スクールソーシャルワーカーだより

みんなお得なのが大好き

アメリカで発達障がい児の療育に用いられて効果を上げている、ABA(応用行動分析)という手法を知人から紹介されました。この手法は、発達障がいの子どもだけでなく、広く教育に応用できるとのことで、私もテキストを取り寄せて学んでいるところです。興味のある方はご連絡ください。

 

また、ABAを家庭の中で実践している団体、NOP法人「つみきの会」のサイトはこちらです。
 → http://tsumiki.org/index.html

 

行動とメリットの関係

ABAでは、子ども(子どもに限りませんが)が何かの行動(望ましい行動でも、問題行動でも)をするのは、そうすることがその子にとって何か「得」だからだと考えます。

 

たとえば、買い物に連れて行くたびに、おもちゃやお菓子を買ってくれと店内で泣きわめく子がいるとします。親としてはほとほと困ってしまいますね。では、この子が泣きわめくことで、この子にとって得なことは? そうです。そうすれば、恥ずかしさに耐えられなくなった親や祖父母によって、おもちゃやお菓子を買ってもらえるということです。

 

  行動      お得な結果          行動の増加・強化
  泣きわめく → おもちゃを買ってもらえる → いつも泣きわめくようになる

 

お得につながらない行動は消えていく

そして、このメリットが保証されている以上、どんなに諭しても叱っても、この子は泣きわめくことをやめないでしょう。もしも、お店で泣きわめくのをやめて欲しければ、「どんなに泣きわめいても買ってもらえない」という経験をさせるしかありません。

 

  行動      お得でない結果         行動の減少・消去
  泣きわめく → おもちゃを買ってもらえない → 泣きわめかなくなる

 

最初は大変ですが、どんなに泣こうがわめこうが、決しておもちゃやお菓子を買ってはいけません。 もちろん、母親が買わなくても、父親や祖父母がたまに根負けして買ってしまうと、やっぱりこの泣きわめき行動は修正されません。これまた大変ですが、家族で一致した対応が必要なのです。

 

望ましい行動も、お得がないと消えてしまう

メリットがなければ消えていくというのは、問題行動だけでなく、望ましい行動も同じです。「うちの子、ちっとも家のお手伝いをしようとしない」と嘆く前に、次のようなカラクリにはまっていなかったか振り返ってみましょう。

 

  行動           お得でない結果           行動の減少・消去
  自発的にお手伝いする → ほめられたり感謝されたりしない → 手伝わなくなる
  自発的にお手伝いする → うまくできなかったと叱られる  → 手伝わなくなる

 

望ましい行動を取った場合には、それがどんなに稚拙で不十分であったとしても、すかさずほめたり、感謝したりするようにしましょう。それによって、子どもは喜びを感じ、その望ましい行動を自発的に行なうようになっていきます。

 

お得の種類

さて、ABAでは、子どもが問題行動をする場合、次の4つの「お得」を狙って行なうことが多いとしています(無意識にやっていることが多いでしょうが)。それは……

  1. 要求の実現 (お菓子を買って欲しいなど)
  2. 嫌な事態の回避 (宿題をやりたくないとか、不安な状況から逃れたいなど)
  3. 注目の獲得 (親や先生に注目されたい、もっと一緒に時間を過ごしたいなど)
  4. 感覚刺激 (刺激が欲しくて、自傷行為をしたり、手をひらひらさせたりするなど)

 

たとえば、注目が欲しくて、あるいは勉強したくなくていたずらなどの問題行動をしている子を、親や先生が叱ったり追いかけたりするというのは、まさにその子の思うつぼです。注目されたとか、叱られている間は勉強しなくてすんだとかいう効果があったわけですから、ますますその問題行動はエスカレートすることでしょう。ですから、ABAでは、次のようなモットーを大切にしています。

 

問題行動を叱るより、望ましい行動をほめよう

 

これを心がけるだけで、ずいぶん子どもたちを望ましい方向に導くことができるようになるでしょう。ぜひ実践してみてください。

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