スクールソーシャルワーカーだより

子どもとビデオゲーム

東北大学未来科学技術共同研究センターの川島隆太教授といえば、ゲームソフト「脳トレ」で有名です。その川島教授らの研究チームが、ビデオゲーム(スマホのゲーム、DS3などの携帯ゲーム、Wiiなどのテレビゲーム、パソコンのゲームなど)に関するこんな研究結果を発表なさいました。

 

子どもの脳の発達に及ぼす悪影響

研究チームは、子どもたちの脳の発達状態、そして、それに関連した知能発達の状態を、数年にわたって追跡調査しました。そして、「長時間ビデオゲームで遊ぶ習慣を持つ子どもたちの場合、そうでない子どもたちに比べて脳の発達が阻害され、いわば『スカスカのスイカ』のような状態になっていく」ことが明らかになったのです。具体的には、脳の中の、前頭前皮質、海馬、基底核といった、「認知機能」を司る部分の発達阻害です。

 

認知機能というのは、たとえば目や耳などから入ってきた情報が何なのか、すでに持っている知識と照らし合わせて判断したり、見えない物や未来を想像したり、論理的に考えたり、何をすべきか決断したり、記憶したり、それを思い出したり、言葉を使ってコミュニケーションを取ったりする力のことです。「知能」と同じような意味だと思っていいでしょう。そして、実際の知能検査でも、長時間のゲーム習慣が、これらの能力の発達を遅らせることが確かめられました。

詳しくは、東北大学のサイトをご覧ください。

 

ゲームの中毒性

これまでの研究でも、ビデオゲームをプレイしているときは、快感をもたらす神経伝達物質(ドーパミンなど)がたくさん放出されることが確認されています。これは、ビデオゲームのやり過ぎは、アルコール依存や薬物依存などと同様、依存症につながる恐れがあることを示しています。

 

幼児から中学生までの発達期に、ビデオゲームを長時間行なう習慣を付けてしまうと、それが依存症化してしまい、本来勉強をしたり、友だちと遊んだり、家族と過ごしたりしなければならない場面でも、ゲームをやめられなくなる恐れが高いということです。当然、学校の成績や人間関係にも影響を与えますし、知能、感情のコントロール、社会性などに問題を抱えたまま成長することになるため、将来的には働けない、引きこもる、暴れるなど、社会的自立にも重大な悪影響を及ぼしかねません。

 

スマホと学力

ビデオゲームだけでなく、子どものスマホ依存も問題になっています。2014年に文部科学省が小中学生を対象に行なった全国調査(全国学力テスト時に行なったアンケート調査)でも、スマートフォンや携帯電話の利用時間と成績には、はっきりとした相関関係があることが明らかになりました。

 

たとえば、中学生が受けた数学Bの場合、スマホ・携帯電話の利用時間が1日30分より少ない生徒と4時間以上使っている生徒では、正答率に18.6ポイントの差が付いています。中学生の国語でも、小学生の算数・国語でも、同程度の差が見られます。

詳しくは、国立教育政策研究所の資料をご参照ください。

 

保護者の責任として

どうしてお子さんにスマホやゲーム機を与えて、やりたい放題やらせるのでしょう。親御さんたちに尋ねると、

「スマホやゲーム機を与えておくと、静かにしているから楽なのよね」

「やらせろとうるさいからから、つい与えてしまって」

……そんな声が聞かれます。気持ちは分かりますが、「今、楽かどうか」だけでなく、「将来、大変にならないかどうか」を考えてみてください。そして、将来のお子さんの幸せのために、今何を身につけさせなければならないかを考えてみてください。

 

学校でもスマホやゲームの利用については指導していますが、ゲームやスマホを使うのは家庭がほとんどです。ですから、小さいときからゲームやスマホの利用時間をしっかりとコントロールする責任は、保護者にあると思ってください。厳しい言い方ですが、本当にそうなのです。

 

別の調査では、スマホを持っているだけで、持っていない子よりも中間・期末試験の結果が十数%も低いという結果が出ています。持っているだけで利用しないなんてことはあり得ませんからね。そして、一度持たせると、コントロールできずに長時間使ってしまう子が多いということです。ですから、そもそも小中学生にスマホを持たせる意味が本当にあるのかどうか、そこから考えてみましょう。

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