スクールソーシャルワーカーだより

肯定的な表現で

いよいよ、今年度も最後の月となりました。お子さんの卒業・卒園、そして修業おめでとうございます。今回は、お子さんが持っている可能性を、さらにさらに伸ばせるような、そんな言葉かけについてお話しさせていただきます。同じことを表現するにしても、ほんのちょっとだけ言い方を工夫することで、お子さんを強力に励ますことができます。

 

とても厳しい大学教授

アメリカの大学教授の話です。この教授の授業は厳しいことで有名でした。教授は、各年度の最初のクラスの時に、受講生たちにこう言ったものです。

 

私は勉強しない学生は好きではない。だから、全力を尽くしてがんばることだ。私は君たちに課題を与える。君たちのすべきことは、それを勉強することだ。念のため言っておくが、君たちのうち50%は最終試験をパスしないだろう。それが君でないように気をつけたまえ。

 

そして、その予言通り、毎年半数の学生が落第していました。

 

さて、ある年から、この教授は、年度の始めに語る受講生たちへの激励をこんなふうに変えました。

 

私は、君たちのすべてが最終試験にパスすることを望んでいる。君たちがパスするのを見るのが私の仕事だ。課題は難しい。しかし、私と君たちとが協力するならば、このクラスのすべての学生はパスできるはずだし、多くを学べるはずだ。さあ、一緒にがんばろう!

 

結果はどうなったと思いますか? 教授の側では採点基準を少しも変えなかったのに、なんと、すべての学生が合格したのです!

 

一人で起きてもいいんだよ

次は、小学校入学を控えたお子さんがいるお父さんの話。お父さんは、目覚まし時計をプレゼントして、お子さんにこう言いました。「これからは、もうお母さんに起こしてもらうようではダメだよ。自分で起きられるようにならなきゃ」……ではなく、

 

これまでは幼稚園だったからお母さんに起こしてもらわなきゃいけなかったけど、明日からは自分で起きてもいいんだよ。

 

このお子さんは、毎朝張り切って自分一人で起きるようになり、勉強も運動も張り切って取り組むようになりました。

 

否定的表現から肯定的表現へ

あることを指示したり指摘したりするのに、「〜するな」「〜するのは悪い」と否定的に表現することもできるし、「〜しよう」「〜するのが良い」と肯定的に表現することもできます。

 

否定的表現 肯定的表現
遅れちゃダメだよ。 3時までに駅に来てね。
うるさい! 口を閉じて話を聞いて。
家の中では走っちゃダメ。 家の中では歩いてちょうだい。
嘘をつくのは悪いことだ。 本当のことを言ってくれるとうれしいな。
勉強しないと、テストの成績が悪くなるぞ。 勉強すれば、もっといい点数が取れるよ。
早く宿題やらないと、遊ぶ時間がなくなるよ。 早く宿題を済ませれば、いっぱい遊べるよ。

 

肯定的イメージを生み出す

カートレースが趣味の友人に話を聞いたのですが、ヘアピンカーブを曲がる際、事前のブレーキが不十分だと、遠心力でカーブの外側に車体がコースアウトしそうになります。万一の事故に備えて、カーブの外側にはクッションが並べてあるのですが、コースアウトしそうになったとき、恐怖のあまりそのクッションに目が行ってしまうと、なぜかかえってクッションにぶつかってしまうそうです。

 

そこで、怖くてもクッションには目を向けず、道路の方、すなわち車を戻したい方向を見ながらカーブを曲がると、うまくコースに戻れると言っていました。

 

人間の無意識は、否定的表現を理解できないと聞いたことがあります。ですから、「遅れるな」という表現を聞くと、「遅れる」というイメージが印象に残ってしまい、まるでコースアウトしかけたカートのように、かえってそちらに向かってしまいます。

 

ですから、できるだけ肯定的な表現で指示することにしましょう。すると、相手の頭の中に「こうすればいいんだな」という肯定的なイメージができ、そのイメージを実現するために脳が働くことになります。それに、「〜してはダメ」という否定的な表現を聞かされるより、「〜するのがいい」という肯定的な表現を聞く方が気持ちいいです。きっと、積極的に望ましい行動を取りやすくなることでしょう。

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