2016年10月号
明石家さんまさんがラジオ番組の中で、自分のお笑い芸人としての地位はあと20年安泰だと話して、笑いを取ったそうです。それは、LINEやTwitterなどのSNSが普及したおかげで、若い世代がどんどんトーク下手になっていくだろうと感じたからだとのこと。どういうことでしょうか?
短文でお手軽に済ませてしまう
さんまさんの説明によると、ご自分もLINEを使うようになって気づいたのは、こちらが相手に何かを伝えようとするときに、1行のメッセージとスタンプを使って、簡単に済ませることができること。それはとても便利である反面、こういうコミュニケーションばかり続けていると、
自分であれこれ考えたり、工夫したりしながら文章を作り上げる能力は、確実に退化していくだろうと、さんまさんは感じておられるのです。
さんまさんはおっしゃいます。たとえば相手に嘘をつかなければならない場合、対面や電話なら、ばれないように、自然に見えるように、必死に文章を考え、間の取り方や表情や挙動などの非言語的な要素も工夫して、それで伝えようとする。けれど、すぐにバレてしまって大騒ぎになり、さらに上手に嘘がつけるように精進する。そうやって、自分のトーク力は磨かれてきた(もちろん、さんまさん流の洒落ですよ。念のため)。しかし、LINEなどのお手軽なツールにばかり頼るようになると、確実にトーク力が崩れてしまうだろうし、文章を書く力も退化してしまうだろう、と。
だから、LINE世代の若手は怖くない、あと20年は大丈夫というわけです。しかし、これは笑いを借りた、若い世代への警告でしょう。仕事や人間関係などの社会生活を順調に送るためには、コミュニケーション能力が絶対に必要です。もしも、LINEなどの過剰利用によって、大切な子どもたちのコミュニケーション能力が育たないのだとすれば、私たち大人にとっても大問題ですね。
学力にも影響する
昨年3月、東北大学が、4万人以上の小中学生を対象とした、「算数・数学のテスト成績と、睡眠時間・家庭学習時間・LINEなど無料通信アプリの使用時間との相関関係」についての調査結果を発表しました。それによると、「
LINEなどの長時間使用は、睡眠時間や学習時間の不足に比べて、より大きく学力を低下させる」そうです。
たとえば、平日に30分未満しか勉強しない子どものうち、LINEなどを使わない子どものテスト成績は平均61点だったのに、1日3時間以上LINEなどを使う子どもは平均50点未満でした。
研究チームは、LINEなどの長時間使用によって、勉強時間や睡眠時間が減った結果として成績が下がるだけでなく、
LINEなどの使用そのものが成績低下の原因になっている可能性を指摘しました。おそらく、知能の働き、すなわち脳の働きが阻害されてしまうからでしょう。
ゲームの長時間使用も同様
ネットゲームやビデオゲームについても、脳に与える悪影響が指摘されています。落ち着きがなくなったり、攻撃的になったり、無責任になったり、健康を無視した生活パターンを送ったりするなど、まるでアルコールや薬物の依存症のようになってしまう危険があるのです。
実際、ネットゲーム先進国である中国や韓国などでは、これが深刻な社会問題化しています。不登校や引きこもりが増えたというだけでなく、寝食を忘れてゲームを行なった結果「過労死」するケースや、ゲームを止めようとした親を殺害するケースまで発生しているのです。日本も確実にその後を追っています。
大切な子どもを守るために
もちろん、無料通話アプリは大変便利ですし、適正なゲームの利用は、脳の働きを活性化したり、ストレス耐性を高めたりするとも言われています。しかし、アルコールなどと同様、やり過ぎは禁物というわけです。
成績が下がったり生活が乱れたりしてから、心配した親がスマホやゲームを制限しようとしても、子どもが大きくなっていたり、依存状態がひどくなっていたりすると、反発されたり暴れられたりして、大変になる場合も多いです。
悪影響が出る前に、使う時間を制限するようにしましょう。当然、その鍵は、保護者の皆さんが握っています。子どもがLINEやゲームをやるのは学校ではなく、家庭なのですから。