スクールソーシャルワーカーだより

発達課題

エリクソンという心理学者が、子どもの発達段階には、それぞれの時期固有の発達課題があると言いました。固有の発達段階をその時期にしっかりクリアしていないと、後でカバーすることは大変ですし、次の発達段階の課題のクリアにも支障が出るようになるというのです。

 

発達段階と課題

乳児期(誕生〜1歳半頃)

この時期の発達課題は、「人や世界に対する信頼感の獲得」です。他の人は、あるいはこの世界は、私のことを助けてくれる安全な存在だという信頼です。この時期の子どもは、空腹、むず痒さ、不安など、嫌なことがあれば泣きます。その時に、周りの大人(主に親)がその不快に気づいてしっかりと対処してくれたり、普段から優しくだっこしたり温かく話しかけたり笑いかけたりしてくれるなら、「この世の中、嫌なことも起こるけれど、なんとかなるもんだ」と子どもは思います。

 

ところが、いくら泣いても放ったらかしで関わってもらえないと、「この世は私の力では対処できない怖いところだ」と思い込んでしまいます。その結果、積極的に世の中に関わり、問題を解決していこうという意欲が育ちにくくなるでしょう。

 

そういうわけですから、この時期の子どもには、関わるのが面倒な場面もあるかもしれませんが、とにかくべったりと温かい関わりをしてあげてください。

 

幼児前期(1歳半〜4歳頃)

この時期の発達課題は、「自律」です。すなわち、排泄・衣食住・感情などのセルフコントロールを身につけていくということです。

 

もちろん、大人に比べれば、この時期の子どものやることなすことは不完全です。しかし、ほんの少しでもできたことをほめられることで、「自分にはできる」という感覚を子どもは育てていきます。その結果、この後の時期に、「いろんなことにチャレンジしていこう」という意欲を持つことができるようになります。ささいなことでも、いっぱいほめてあげてくださいね。

 

幼児期後期(4歳〜6歳頃)

幼稚園の時期ですね。この時期の発達課題は、「自主性」です。好奇心が旺盛になり、いろんなことをやってみたくなります。

 

その中には、社会的に問題のある行動(たとえば、危険な行動やいたずらや友だちへの迷惑行為)もあります。当然、そういうことは禁止しなければなりませんが、あまり頭ごなしに「あれもダメ、これもダメ」と禁止していると、好奇心とか、チャレンジ精神とか、自発的な行動への意欲とか自体を損ねてしまうことにもなりかねません。

 

ですから、「〜しちゃだめ」というしつけ方は自分や他人に対する危険な行為にとどめ、できるだけ「〜しようね」というふうに、望ましい行動を教えることを心がけてみましょう。

 

学齢期(小学生の時期)

この時期の課題は、「勤勉性」です。勉強にしろ、スポーツにしろ、家庭のお手伝いにしろ、誰かを助ける行動にしろ、「望ましい行動を、自分の意欲によって、一生懸命に行なう」態度を身につけるということですね。親や教師が「こうしろ」と命令するからやるというレベルから、「これはしなければならないことだから、あるいはしたいことだから、誰も見ていなくても一生懸命にやる」という態度です。

 

こういう態度を育てるためには、たとえ不完全でも「自分で考えてみよう」「失敗してもいいから、自分でやってみよう」と励まし、たとえ失敗しても、一方的に責めるのではなく、「そこから何を学べるかな?」と尋ねてみましょう。そして、ほんの少しでも望ましい行動を取ったら、それをめざとく見つけ出し、「よく頑張ったね」とほめましょう。

 

青年期(中学生〜高校生の時期)

ここまでの発達段階を順調にクリアしてきたら、この時期の子どもは、「自我同一性」の課題に取り組むことができます。すなわち、「自分はかけがえのない大切な存在だ」という絶対的な自信を持ち、学習や部活動や友だちとの関わりなどを通して、「自分は何者で、何をこれから目指していけばいいんだろうか」ということを、建設的に考えられるようになるということです。そして、自立した健全な大人に成長していくことができます。

 

この時期の子どもは、自分自身や将来のことが分からなくなって、いろいろと迷います。大人の方が答えを焦らず、子どもにも「焦らなくていいよ」と励ましながら、じっくりと話を聴いてやりましょう。すると、子どもは安心して迷い、自分の頭で考えることができます。

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