スクールソーシャルワーカーだより

して欲しいことを伝えよう

時々、お子さんがこちらの言ったとおりに動いてくれなくて、「何度言っても分からないんだから!」とイライラしておられる親御さんとお話しすることがあります。言ったとおりに動いてくれないと、がっかりしてしまいますが、ちょっと待ってください。お子さんは親御さんを困らせてやろうと思って言うことを聞かないのではなく、そもそも親御さんが伝えたいことを、お子さんが正確に理解していないために、動くことができないのかもしれません。

 

ママ、おしっこ!

小話を一つ。

電車の中で、3歳位の男の子がおしっこをしたがっている様子です。

 

男の子:「マ〜マぁ〜、おし〜っこぉ〜」。
ママ:「えー、次の駅までまだかかるわよ。どうしてもっと早く言わないの」。
男の子:(早口で)「ママおしっこっ!」。

 

次の小話。


山田英子さんという名前の方が、テレビショッピングに電話で商品を注文なさいました。氏名を伝えるとき、名前の漢字を尋ねられましたので、「山川のヤマに、田んぼのタ、英語のエイに、子どものコ、です」と答えました。

 

後日、送られてきた商品の宛て名には「山田A子様」と書かれていました。

 

日本語って難しいですね。こちらは、自分がこういう言い方をしたり、こういう態度をとったりしたら、当然相手に自分の真意が伝わっているはずだと思います。しかし、案外他の人には違う意味で伝わってしまうことも。

 

して欲しい行動は?

ケンカの絶えない夫婦が、カウンセリングに行かれました。すると、カウンセラーにこんな課題を出されました。たくさんのカードを渡されて、それぞれ、結婚してから相手からされてうれしかったことと、相手からされて嫌だったことやして欲しくないことをリストアップするという課題です。

 

一定時間の後、できあがったカードを分類してみると、夫も妻も、相手からされて嫌だったことやして欲しくなかったことのカードの方が、されてうれしかったことのカードよりも、圧倒的に多かったことに気づきました。

 

この実験で分かるとおり、私たちがストレスを感じる相手といるときには、「嫌だ」をかなり強く意識してしまいます。その結果、自分のストレス状態を相手に伝える際、当然のことのように「そういうことをされて頭にきた」「どうしてそんなことするの?」と、「されて嫌なこと」を指摘して責めたくなったり、「そんなことするな」と禁止したくなったりします。

 

心のガードを上げさせない

もちろんそれでも悪いわけではありません。しかし、聞かされる側に立つとどうでしょう。「嫌だ」や「するな」を伝えられると、責められていると感じます。すると、無意識に心をガードするので、相手の言葉が心に響かなくなってしまいます。もしかしたら、お子さん(や配偶者など)がなかなかあなたの言うことを聞いてくれないのは、心をガードしているために、右の耳から左の耳に言葉が通り抜けてしまっているからかもしれません。

 

ですから、「〜されると嫌だ」「〜するな」を言った後に、それをひっくり返して、「〜して欲しい」「〜してくれるとうれしい」「〜してくれると助かる」「〜してね」「〜しようね」「〜したらどうかな?」「〜したらいいと思うよ」というふうに、して欲しいことを肯定的に表現してみてください。場合によっては、最初の「〜されると嫌だ」や「〜するな」も、よっぽど困ったとき以外は必要ないかもしれません。

 

して欲しいことを伝えてみよう

私たちが誰かに「〜するな」と禁止命令をしたり、「〜されると嫌だ」と責めたりするのは、その代わりに望ましい行動を「して欲しい」からです。であれば、それをストレートに伝えてみましょう、ということです。きっと、その方がずっと誤解無く相手に伝わるはずです。ほんのちょっと、心がけてみましょう。

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