スクールソーシャルワーカーだより

心配性への処方箋

先日、心配性の性格がつらいとおっしゃる方とお話ししました。お子さんのこと、生活のこと、健康のことなど、いろいろなことが心配で、落ち着かないとおっしゃいます。読者の皆さんは、ご自分が心配性だと思われますか? 今回のテーマは、心配性に対する処方箋です。

 

関わりすぎと心配性

お子さんなどについて、あれこれ事細かに注意したくなったり、指導したくなったりすることがあります。その結果、うるさがられて関係が悪くなってしまったり、指示待ち人間化させてしまったり、依存的にさせてしまったりすることも。ついついそんな「関わりすぎ」をしてしまうケースの中には、関わる側の心配性が原因というものがあります。

 

不安症と破壊的未来思考

私たちが「大丈夫」という感覚を見失って、不安でいっぱいになるときには、間違いなく、破壊的な未来を想像しています。たとえば、子どもの問題で悩んでいる親御さんは、「こんな問題を抱えているようでは、この子の一生はだめになる」「これは自分の子育ての失敗で、私は一生笑いもの」「このままでは、家族みんなが不幸になる」などと考えておられるようです。

 

落ち着いて考えれば、そうならない可能性の方がはるかに高いのですが、ついつい破壊的な未来を想像してしまうのです。そして、もしもそんなひどい未来が実現したら大変ですから、「だから、私がそうならないように教えたり、手伝ったりしてやらないと」と思い、あれこれ過剰に関わってしまうわけですね。

 

破壊的未来思考とべき思考

では、つい破壊的な未来を想像してしまう癖がどこから来ているかというと、「こうあるべきだ」というべき思考からです。私たちの頭の中には、「まともな人生とはこうあるべき」「幸せになるためにはこうするべき」などという固定的な価値観、固定的な幸せイメージがあります。それはそれで悪くありませんが、あまりにもそれにとらわれ過ぎてしまうと、描いた通りに自分や他人や状況が動いてくれないときに、不安や不満にさいなまれることになるのです。

 

皆さんは、自分自身や状況がどうなったら幸せになれる、あるいは不幸になると思っていらっしゃいますか? 「本当にそうかな?」と、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。それで少し楽になれるかもしれません。

 

今、皆さんは、不安や恐れ、心配を覚えていることが何かありますか? こんなふうに自分自身に尋ねてみましょう。

  1. こうなったら嫌だと思う、「最悪のケース」はどうなることですか?
  2. こうなったらいいと思う、「最高のケース」はどうなることですか?
  3. 現実的に、一番ありそうな結末はどういうものですか?

スズメバチが部屋に入ってきたら大変ですね。しかし、部屋の中にハチがいるとしても、羽音だけが聞こえるという状況に比べれば、ちゃんと姿が見えている方が、不安が少ないでしょう。上述のように自問することで、私たちが何にとらわれているのかということを意識し、ちょっと距離を置いて眺めてみると、それだけで心が軽くなることがあります。

 

「公表効果」をうまく利用する

もう一つの不安への処方箋は、「公表効果」の利用です。これは、「口に出して繰り返し発言すると、その通りの感情になりやすい」という心理効果です。例えばつまらない作業でも「楽しい!」と口に出すことで、だんだん楽しいものに変わっていく、ちょっと苦手なことでも「大丈夫、できる!」と口にしていると、本当に何とかなる気がしてくる……。これを「公表効果」と言います。

 

ポイントは「肯定的な言い方をする」こと。「苦しくない」ではなく、「楽しい」というふうに表現します。そうすることで自己肯定感が増し加わり、やる気や根気が生まれ、良い効果を生み出すのです。

 

なお、「公表効果」は他の人にも使えます。相手が心配なあまり「そんなことをやっていて本当に大丈夫なのか?」という言い方をするよりも、「お前にはきっとできるよ。だから、どうしたらうまくいくか考えてみよう」という言い方をする方が、本人の自己肯定感ややる気をアップさせやすいことでしょう。お子さんのことが心配なときは、かえって肯定的な伝え方を心がけてみましょう。

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