スクールソーシャルワーカーだより

期待の力

ギリシャ神話ってお好きですか? 私は若い頃にハマっていたことがあります。今日は、ピュグマリオーンという王さまの話から始めてみましょう。もちろん、最後は子育ての話に持っていきます。

 

ピュグマリオーンの恋

キプロス島の王ピュグマリオーンは、仕事一筋の堅物で女性に見向きもしません。このままではお世継ぎも期待できないと困り果てた家来たちは、ついに美の女神アフロディーテ(ローマ神話のビーナス)に願って、ピュグマリオーンに結婚するよう命じてもらうことにしました。

 

女神の命令に逆らうわけにはいきません。観念したピュグマリオーンは、女神にこう言いました。「分かりました。しかし、アフロディーテさまほど美しい存在はこの世にありません。彫刻家でもある私が真に愛せるのはあなたさま以外にありません。結婚はいたしますが、その前にせめて美の極致であるあなたさまの像を彫らせてくださいませんか」。

 

美の極致と言われて悪い気がしなかったのでしょう、アフロディーテは快くその願いを受け入れます。許可をもらったピュグマリオーン、象牙を使ってアフロディーテを模した美女像を彫り上げ、ガラテイアと名付けました。

 

ところが、ピュグマリオーン、なんとこのガラテイアに恋をしてしまいます。そして、寝室に置き、服や食事を用意し、話しかけ、どうか本当の人間になっておくれと懇願しました。ついにはその彫像の元から一歩も離れず、食事も取らずに日がな一日ガラテイアに話しかけるようになったピュグマリオーンは、だんだんと衰弱していきました。

 

見かねたアフロディーテは、ガラテイアに命を吹き込みました。こうして、ピュグマリオーンは人間になったガラテイアを妻に迎えましたとさ。とっぴんぱらりのぷう。

 

ピグマリオン効果

この話から、「ピグマリオン効果」という心理学用語が誕生しました。これは、ピュグマリオーンがガラテイア像に対して「人間になればいいのに」と期待していたら、本当に人間になったという点にちなんで、「指導者(親や教師やコーチなど)が期待することによって、子どもの成績が向上する」「ほめられ、期待をかけられると、人は期待に添った結果を出す」という効果を指します。これとは逆に、「どうせこいつには無理だ」と期待しないことで成績が向上しなくなることを、「ゴーレム効果」と呼んだりします。

 

ここが足りないと責めるより、「いつも頑張っているね」「一生懸命にやる姿は気持ちがいいね」「元気なあいさつで、こちらも元気をもらったよ」「楽しそうにお絵かきしてるね」「今回、とても頑張ったね。だから、次ももっといい成績が取れると期待しているよ」などと、プラスの評価を伝える方が効果的だということですね。

 

プラスとマイナスとプラスでプラス

もちろん、叱ったり注意したりしなければならないときもあります。そんなときも、マイナス面の指摘の前後を、プラス評価で挟んであげると、やる気を引き出し、注意したことを聞いてもらいやすくなります。

 

例えば、「昨日は帰ってきてすぐに机に向かって、お母さんとても頼もしかったなぁ。ただ、漢字の書き取りを忘れちゃったのは残念だったな。宿題は、夕食までに全部終わらせられるといいね。あなたは頑張り屋さんだから、きっとできるはずだよ」というふうに。

 

能力ではなく、努力や工夫をほめよう

なお、ほめる際は、相手の能力をほめたり、結果だけほめたりするより、相手が努力したり工夫したりしている点をほめた方が、やる気につながると言われています。例えばテストの点が良かったときに、「頭がいいね」とほめるより、「計算ドリルをたくさんこなしたからだね。よく頑張ったね」などとほめた方が、「次も一生懸命ドリルをこなそう」と思いやすいということです。当然、良い結果にもつながりますね。

 

努力や工夫をほめるなら、たとえ結果が思わしくなくてもほめることができます。極端な例ですが、あるお父さんは、息子が0点を取ってきたときにこうほめました。「お父さん、感動した。0点のテストを恥ずかしいと思って隠すこともできただろうに、こうやって正直に親に見せるんだもんなぁ。お父さん、お前のその正直なところが大好きだ。正直な人間はサボったり手を抜いたりしないから、必ず勉強でもスポーツでも結果が出ると信じているぞ」。

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