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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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ほめりゃあいいってもんじゃない


2017年7月号
「子どもや部下はほめて育てましょう」とよく言われます。ダメ出しされてやる気になる人もいますが、それは元々相当やる気のある人です。

しかし、ただほめればいいというものでもありません。間違ったほめ方をしてしまうと、かえって相手の成長を邪魔することにもなるようです。

結果評価とプロセス評価

アメリカのハーバード大学で、ドゥエック博士のチームがこんな実験を行ないました。まず数百人の子どもたちを2つのグループに分け、それぞれ同じテストを受けてもらいます。それから、指導者が子どもたち全員をほめました。ただし、グループによってほめ方を変えます。グループAは結果を評価してほめるグループ。グループBはプロセスを評価してほめるグループです。

結果をほめるというのは、たとえば「80点だったよ。よくやったね」とか「この問題は難しいのに解けるなんて、頭がいいなあ」とかいうようなほめ方です。

一方、プロセスをほめるというのは、「難しい問題でも、時間ギリギリまで諦めないでがんばって取り組んでいたね」「終わってももう一度見直して、ミスがないか確かめていたね」というふうに、テストに取り組む前向きな姿勢、努力、工夫、粘り強さ、注意深さなどをほめるということです。

さて、全員がほめられたところで、指導者がこんなふうに問いかけます。「もうひとつテストを用意しました。それは、今受けてもらったものより難しいテストです。ただし、受けるのは全員ではなく、希望者だけです。あなたは、その難しいテストに挑戦したいですか?」 すると、結果をほめたグループAのほとんどの子は、受けたくないと言いました。そして、プロセスをほめたグループBのほとんどの子は、受けたいと言いました。

この実験は、何を示しているでしょうか? 努力や工夫などプロセスをほめられた子は自信が育ち、もっと難しいことにも積極的に取り組もうというやる気を持つことができるようになります。しかし、結果だけほめられた子どもは、失敗したときにはほめられないだろうとか、叱られるんじゃないかとか思うようになります。そして、失敗しないために、様々なことにチャレンジすることを避けるようになります。すなわち、かえって自信ややる気が育たなくなるということです。

0点でもほめられます

プロセスをほめることを心がけると、結果がたとえ思わしくなくてもほめることができます。極端なことを言うと、子どもが算数のテストで0点を取ってきてもほめることができます。たとえば、隠さないで結果を親に見せたというのは、その子の正直さの表れであって、とても素晴らしい性質ですね。

あるいは、今までは親がどんなにやれと言っても、ほとんど自宅学習をしなかったのに、今回のテストの前は1日15分机に向かっていたとしたらどうでしょう。親や教師としては、1日15分の自宅学習ではとうてい足りないと思うでしょうが、それでも今までと違って望ましい方向に行動を改めたのですから、そこはしっかり認めてあげましょう。「今回、おうちでも一生懸命勉強していたの、お母さん知ってるよ。よく頑張ったね。算数はこれまでの積み重ねがものを言うから、今回は残念な結果だったけど、そうやって努力できるあなただもの。必ず結果が出てくるよ」。

これを「だからもっと勉強しなさいって言ってるでしょう。15分なんかじゃ全然足りないって分かった? 毎日1時間は勉強しないと、到底みんなに追いつけないよ」と言うこともできます。でも、きっと前者の伝え方の方が、子どものやる気を引き出すのではないでしょうか。

プロセスについての気持ち

プロセスを評価する際、「偉いね」「素晴らしいね」とほめるより、さらに強力に相手にエネルギーを与える方法があります。それは、相手がしたことに対するこちらの肯定的な気持ちを伝えたり、感謝したりするということです。「私はうれしいよ」とか「ありがとう」とか。

たとえば、子どもが自発的に庭掃除をしてくれたとします。そのとき、「お。言われないのに掃除するなんて、偉いぞ」とほめるより、「お父さん、ここのところ忙しくて庭掃除までなかなか手が回らなかったから、お前に掃除してもらってとても助かったよ。ありがとう。そうやって自分で家をきれいにしたいと思ってくれるなんて、お父さんはうれしいなあ」と感謝したり、喜びを表現したりした方が、きっと子どもの自尊感情を育て、「もっとみんなが喜んでくれるような行動をしよう」という健全な意欲を育てることでしょう。

ぜひ、試してみてください。きっとお子さんの顔つきが変わりますよ。

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増田泰司(ますだたいじ)

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