本文へスキップ

福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

電話でのお問い合わせはTEL.080-1659-4195

〒969-1302 福島県安達郡大玉村玉井西庵183

社会性と貢献感


2019年6月号
最近、引きこもりの男性により、多くの小学生やその保護者が死傷した事件、また同じような事件を引き起こさないようにと、父親が引きこもりの息子を殺してしまったという事件が続き、高齢の両親に養われる中年の引きこもりの人に注目が集まっています。もちろん、引きこもりの人は犯罪者予備軍だとか、人格的におかしいとかいう偏見は間違いです。しかし、一方で私たちは子どもたちが健全な社会性を育て、社会とのつながりの中で生きていけるよう、小さいときから援助していく必要があります。では、どんなことに注意すればいいのでしょうか。

自信と社会性

不登校や引きこもりの人の多くは、社会(学校や職場や地域)の中で生きる自分に対して、十分な自信が持てないでいます。この場合の自信とは、「自分は素晴らしい存在だから、人生のあらゆる面でもっと素晴らしくなれる」「たとえ困難がやってきたとしても、自分にはそれを乗り越える力がある」というような感覚のことです。

人との関わりは、必ずしも自分の思い通りには行きません。つらいことや悔しいことや残念なことや失敗もたくさん経験します。もちろん、それ以上にうれしいことや素晴らしいことがたくさん起こりますが、自信を十分持てないでいる人は、ほんの少しでも傷ついたりがっかりしたり失敗したりすると、怖くてなかなか社会とのつながりが持てなくなってしまいます。

ですから、子どもの頃から、自信を十分に育てることが重要です。かといって、人との比較の中で、「あの人たちよりも自分は優れているからOKなんだ」という自信の持ち方だと、自分よりも優れた人たちの前では途端に自信喪失してしまいます。また、自分の方が優れていることを証明するために、自分よりも劣っていると思う人を馬鹿にしたり、自分よりも優れていると思う人のあら探しをしたりして、人間関係をおかしくしてしまいかねません。ですから、私たちには、人と比較して得られる自信ではない、別の種類の自信が必要だということです。

一般的にほめれば自信が育つと思われがちですが、他の人と比較してほめたのでは、健全な自信は育ちません。では、どうやって大切な子どもたちから、健全な自信を引き出し、育ててやることができるでしょうか。

役割と自信

6月3日朝のNHKラジオで、現在人手不足で求職者売り手市場にも関わらず、様々な理由で就職せず引きこもりやニート状態になっている若者への関わり方のヒントを、専門家が紹介しておられました。働いていないことを責めるような関わり方をすると、自尊心を傷つけられて自信を失い、ますます社会とのつながりを恐れるようになります。ですから、何か助けて欲しいことを見つけて、助けてくれるよう依頼するというやり方を提案しておられました。たとえば、パソコンの使い方や接続の仕方が分らなければ、子どもにやってもらいたいとお願いする。地域の行事などで手が足りないところを手伝って欲しいとお願いする。そういう方法です。

役割を果たしているとき、人は「自分は社会のため、他の人のために貢献できている」と実感することができます。これを貢献感と言います。そして貢献感は、人との比較で得られる不安定な自信ではない健全な自信を育てます。

そして、この専門家は、子どもが依頼を引き受けてくれたら心から感謝をしましょうと勧めておられました。感謝は貢献感をさらに強めるからです。

役割を与えて感謝しよう

お子さんが不登校であってもなくても、自信に満ちあふれたタイプでもそうでないタイプでも、中学生でも幼稚園年少さんでも、ぜひ家庭の中に役割を用意してあげてください。それは単なるお手伝いではなく、「これが、あなたが担当する家事だよ」という「家事分担」です。そして、その役割は複数あってもかまいませんが、洗い終わった食器を食器棚に戻すとか、新聞を取ってくるとかいうように、毎日やるものを必ず含めてください。もちろん、成長に伴って内容は変えてかまいません。

そして、実行したら「ありがとう。ごくろうさま」と両親それぞれから感謝とねぎらいの言葉かけをしましょう。「偉いね」とほめるのではなく、感謝するのです。そちらの方がはるかに大きく自信を育てることができます。もちろん、子どもに対してだけではなく、大人たちもお互いに感謝し、ねぎらい合いましょう。家庭を感謝に満ちあふれる場にしましょう。それが自信を育てます。

information

福島県大玉村
スクールソーシャルワーカー
増田泰司(ますだたいじ)

〒969-1302
福島県安達郡大玉村玉井西庵183
TEL.080-1659-4195
FAX.0243-48-2909