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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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手段と目的の区別


2020年1月号
ちょっと遅くなりましたが、新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。年が改まり、皆さんもお子さんも「今年の目標」を設定なさったでしょうか。今回は、目標を設定する際に忘れがちなポイントの一つについてお話しします。それは「手段と目的を混同しない」「手段を目的化しない」ということです。

手段の目的化

先日、「働き方改革」に取り組んでいる企業のうち、成功を実感しているのは12%に過ぎないという記事を読みました(「47NEWS」1月6日配信)。働き方改革の目的は、「利益を上げること」と「社員が幸せになること」という企業の2大目的を両立させるためです。そのために残業時間を減らすという手段が用いられています。残業時間を減らすこと自体が目的なのではありません。

ところが、何のために残業を減らすのかということが無視され、残業を減らすこと自体が目的化するとどうなるでしょう。一人あたりの業務の量が変わらないのに残業を減らせと上司に命令された社員たちは、仕方なく残った業務を仕事環境としては非効率な場所(家や飲食店)で行なったり、タイムカードに記録しないサービス残業を行なったりして帳尻を合わせます。残業代をもらえない上に実質的な業務時間が増え、社員の幸福感は下がる一方です。そうなると職場の士気が落ちて利益も減り、さらには離職者が続出して一人あたりの負担が増えていくという悪循環が起こります。

記事の著者はこう言います。
(失敗するのは)『どうやって残業を減らせるか』を考えてしまうHow(どうやって)企業です。一方、うまくいっている企業はWhy(なぜ)企業です。『残業が発生するのはなぜか』という問題の発生原因を考えてから対処します。
すなわち社員の業務が多い原因を調査し、無駄な業務を徹底的に排除しました。その結果、社員の幸福感も企業の利益も上がったという実感を得ているのです。

いろいろなところに見られる手段の目的化

手段の目的化は別に企業だけの問題ではありません。ありがちな例はダイエットです。体重を減らすためにジョギングをするとか筋トレをするとか食事制限をするとかいうのが手段だというのは分かりますね。しかし、「体重を減らすこと」もまた手段に過ぎないということにお気づきでしょうか。なぜ自分は体重を減らしたいのだろうか。なぜ今の体重ではダメなんだろうかという「なぜ」に注目してみましょう。

目的が分からないのも手段の目的化

なぜそれをするのかという理由を考えずに、ただ言われたことを行なったり、前例に従って行動したり、ルールを守ったりするというのも手段の目的化になりかねません。

結婚したばかりの女性が、最初に迎えた夫の誕生日に得意のローストビーフを作りました。夫は、妻が牛肉の塊をオーブンに入れる前に、わざわざ両端の肉を切り落とすのを見て不思議に思いました。そこで理由を尋ねると、「お母さんがそうしていたから」という答え。そこで、妻の実家に帰省した際にその話を義母にすると、「私の母がそうしていたから」という答え。

そんなわけで妻の祖母の元を訪ねた際に同じ話をすると、こういう答えが返ってきました。「それは、昔私たちが住んでいた家のオーブンが小さくて、お店で買ってきた肉のサイズだと入らなかったからですよ。」

なぜそれをするのか

「○○高校に合格するために、一日4時間勉強する」「漢字検定8級を取るために、1日問題集を5ページ解く」「中体連で優勝するために、ダッシュ練習を1日100本する」「カウンセラーになるために、○○大学大学院に入る」などが手段だというのは理解しやすいですが、そもそも「○○高校に合格する」も「漢字検定8級を取る」も「中体連で優勝する」も「カウンセラーになる」も、厳密には手段だということにお気づきでしょうか。高校に入学して人生が終わるわけではありませんからね。

「自分はなぜそれを目指すのか」「なぜ自分は子どもにそれを実践・達成してもらいたいと思っているのか」、ぜひ自問してみてください。そして子どもたちにも「なぜそれをするの?」「どうしてそれをしたいと思ったの?」と問いかけて考えさせましょう。「ああー、なるほどね。だから自分はそれを目指すのか。」と腑に落ちたなら、必ずやる気も根気もグーンとアップします。

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増田泰司(ますだたいじ)

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