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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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子どもは素直です


2020年2月号
「あらゆる子どもは素直です。」などと言うと、「そんなはずはない」「うちの子は例外」という反論がちらほらと聞こえてきそうです。しかし事実です。それを前提とした子育てや指導をした方がいい。今日はそんなお話です。

上手に出したんだから

アドラーは、フロイトやユングと同時期に活躍した精神療法家です。彼が知人夫妻と外食してからその人たちの家を訪問すると、5歳になるその家の子どもが客間に足の踏み場もないほどオモチャを散らかして遊んでいました。お母さんが叱ろうとしますが、アドラーはその前にその子に言いました。「上手にオモチャを出したねえ。それなら、オモチャを片付けるのも上手にできるんじゃない?」 その子は1分足らずですべてのオモチャをきれいに片付けたそうです。

子どもは素直です。ですから、身近な大人が「あなたはこういう人間だよ」というメッセージを言葉や態度で伝えると、素直にその通りに反応します。アドラーは知人の子どものことを「上手に片付けられる子だ」と評価し、それを言葉で伝えました。ですから、その評価通りにその子は上手に片付けたのです。

あなたは素晴らしい存在だ。だからそれにふさわしい素晴らしい行動が取れるはずだ。そのように信頼されると人はその信頼に応えたくなるのですね。

お願いだからいい子になって

逆に、マイナスの評価をしていると、かえって相手からそれにふさわしいマイナスの行動を引き出すことになります。ある親が「お願いだからいい子になって」と言いながら子どもを育てました。その子は成長して、立派な(?)やくざになりました。

人の無意識は現在進行形のことしか理解できません。「これから良い子になって欲しい」という未来についてのメッセージを、無意識は「現在は悪い子」という意味に受け取ります。ですから、その子は繰り返し「いい子になって」と聴かされているうちに「自分は悪い子だ」という確信を深め、悪い子にふさわしい行動をする大人に成長したというわけです。

こういう部分がある

どんなにダメに見えても、人間なら必ず良い部分があります。そう信じて探してみましょう。そうしたら必ず見つかります。

コツは完璧を求めないことです。100%完璧を求めたら、子ども(や他の大人)を肯定的に評価することはできません。100点以外は0点と同じというような極端な「ゼロか百か思考」「白黒思考」に陥らないで、ほんの少しでも肯定的な面があればそこに注目して、喜んだり感謝したりしましょう。

プラスからプラスプラスへの指導

「ここがダメだからこうしなさい」という指導もいいですが、場合によっては「今のお前はダメだ」という否定的な評価が伝わってしまって、逆効果になってしまうことがあります。それよりも「ここがこんなふうに素晴らしい。だからそれをもっと生かすために、今度はここをこんなふうに気をつけてやってみよう」という指導なら、肯定的な評価が伝わりますね。

ちょっとぽっちゃりめの女性芸人さんが、明石家さんまさんとのやり取りを披露しておられました。さんまさんの番組に呼ばれたとき「俺、お前の体格をイジったことないよな。それはお前が(見た目とかリアクション芸とかじゃなくて)トークだけで笑いが取れる芸人と思うからや」。それを聞いて以来、さんまさんの「ここはこういうふうにした方がいい」というアドバイスを素直に聞こうと思えるようになったそうです。

私たちは大切な子どもたちのダメなところを見つけて、それをたたき直すような指導を目指してきたでしょうか。それとも良いところを見つけて、それを伸ばしたり生かしたりできるような指導を目指してきたでしょうか。

もちろん皆さんは後者です。そうじゃない人は、そもそもこんな文字だらけのプリントを最後まで真剣に読もうなどと思いません。ですから、さらにそれに磨きをかけ、素直な子どもたちに「あなたは素晴らしいから、もっと素晴らしくなれる」というメッセージがどうしたらもっと伝わるか研究し、実践しましょう。

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