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福島県大玉村 スクールソーシャルワーカーだより

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するなと言われるとしたくなっちゃう


2020年11〜12月合併号
「鶴の恩返し」「浦島太郎」「青ひげ」「パンドラの箱」など多くの物語や神話で描かれているように、人は禁止されたり強制されたりすると、かえってその逆の行動を取ってしまいたくなるものです。ですから、それを踏まえた子育てが必要です。今日はそんなお話をさせていただきます。

カリギュラ効果

心理学者ジャック・ブレームは、「人は自由を制限されると反発し、より自由に執着する」と指摘し、そういう心の働きのことを「心理リアクタンス」と呼びました。人にはこういう性質があるので、「するな」と禁止されるとかえって実行したくなり、「しろ」と強制されるとかえって実行したくなくなるというのです。

日本では、心理リアクタンスが働いた結果起こる現象のことを「カリギュラ効果」と呼ぶことがあります。この用語は、1980年に公開された米伊合作映画「カリギュラ」に由来します。表向きは、古代ローマ帝国の第3代皇帝カリグラ(英語ではカリギュラ)の生涯を描いた歴史大作ですが、過激なシーンが物議を醸しました。そこで、アメリカのボストン市が市内上映禁止の条例を作ります。すると、多くのボストン市民がかえって興味をそそられ、わざわざ近隣の町に出かけてこの映画を観たため、皮肉にも大ヒットに貢献することになってしまったのです。

子育てでも、カリギュラ効果が発生してしまうことがよくあります。「これはしちゃダメ」とキツく言い聞かせたのに、子どもがそれを守らないで実行してしまうとか、「しなさい」と強く言えば言うほど、頑として子どもが動かないというのは、多くの親が経験することではないでしょうか。ホントに困ってしまいますね。

対策

カリギュラ効果が起こってしまうと、親はもちろん子どももイライラしてストレスです。とはいえ、しつけや指導をしないわけにはいきません。危険な行動は止めなければ取り返しが付かないことになりかねないし、何でも子どもの好き勝手にさせるのでは社会性や学力が身につかなかったり、健康を損ねたりしてしまうでしょう。では、どのようにすればいいか、いくつか紹介しましょう。

(1) 肯定的な優しい言い方をする

「靴を脱ぎ散らかしてはいけない」というふうに「〜しない」という否定的な表現で禁止したり、たとえ「〜する」という肯定的な言い方でも「靴はそろえなさいって言ったでしょう!」とキツい言い方で命令(すなわち強制)したりすると、反発されてカリギュラ効果が発生します。

そこで、「靴はそろえてから上がろうね」というふうに肯定的かつ優しい言い方で伝えるようにします。そして、ほんの少しでも(ここ重要!)できたら、「お願いしたとおりにしてもらってうれしい」と喜んだり「お願い聞いてくれてありがとう」と感謝したりしましょう。するとその行動が伸びていきます。

(2) 別の形で好奇心を満たす

子育てで起こるカリギュラ効果の背後には、「ダメって言われてるけど、やってみたらどうなるんだろう」という子どもの旺盛な好奇心が隠れていることがほとんどです。好奇心自体は大変素晴らしい宝物ですから、別の形で満たしてあげることはできないでしょうか。

たとえば、高い所に登りたがる子どもなら、親が見ているところで脚立を上り下りする遊びをさせるとか、包丁に触りたがる子どもに、刃物ではない他の台所グッズで好きなだけ遊ばせるとか。

(3) 時々思い切りやらせてみる

ダイエットが長続きするこつは、ずっと「甘いものは食べちゃダメ、高カロリーなものは食べちゃダメ」と自分に禁止令を課し続けることよりも、「5の付く日は好きなものを食べていい日にしよう」というふうに、時々息抜きの時を設けることだそうです。

同様に、たとえばどうしても日々のゲームの使用時間が守れない子どもに対しては、時々「ゲーム時間3倍デー」なんていう日を設けるのもいいかもしれません。

(4) 交渉する

親が一方的にすべきことやすべきでないことを上意下達するのではなく、親子の話し合いの上でルール作りをするということです。もちろん、親として絶対に譲れないものはありますが、そうでない部分については子どもの考えや気持ちを聞きながら、これならまあ双方納得できるというラインを見つけ出すのです。

それなら子どもは自分が納得して受け入れたルールなので反発しません。また、自分の考えや気持ちを他人に伝える能力や交渉する能力を身につけることができるというおまけ付きです。上記3番の「時々思い切りやれるとき」についても、話し合いの上決められるといいですね。

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増田泰司(ますだたいじ)

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